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セリエA 5日前

「辞めようと思ったことは…」イタリア代表、カラフィオーリの“軌跡”。EUROの主役は、絶望の淵から這い上がった【コラム】

シリーズ:コラム text by 佐藤徳和 photo by Getty Images

絶望的な大怪我。それでも「強くなった」



 それは、プロ契約を締結してから2ヶ月が過ぎた2018年10月2日のことだった。UEFAユースリーグの一戦、チェコのヴィクトリア・プルゼニとの試合で、左ひざの靭帯の全てと関節包を断裂し、半月板も骨折するという、交通事故に遭遇したような重傷を負った。相手選手との激しい接触で、膝から下が逆に曲がるほどの痛ましいアクシデントだった。

 カラフィオーリは、アメリカのピッツバーグで、フレディー・フー医師の執刀を受けた。ズラタン・イブラヒモビッチのひざの手術も担当した世界的名医だ。

「若かったから、事態をあまり深刻に受け止めることもなく、ことの重大さも理解していなかった。辞めようと思ったことはないし、それどころか、早くピッチに戻ってやろうと思っていたよ。『けがをする前よりも強くなって戻る』というフレーズは、けがをした時によく言われる常套句だけれど、自分はそれを身をもって体験し、実際にけがをする前よりも強くなったんだ」と、重傷を乗り越えられたのは、若さだったと強調するが、精神的にもタフであったことを伺わせるエピソードだ。

 重傷に打ち勝ったカラフィオーリは、2019年9月16日のプリマベーラの一戦、キエーボ戦で約1年ぶりの復帰を果たすと、その1ヶ月後には、パウロ・フォンセカ監督が指揮していたトップチームからの初招集を受ける。そして、19/20シーズンの最終戦、ユベントス戦で、ついにセリエAデビューのチャンスを手に入れる。それは、コロナ禍における無観客での一戦だった。

 左サイドバックとして先発出場し、1-1で迎えた40分には、エリア内で絶妙なトラップからPKを誘発するなど、そのシーズンの王者を相手から、3-1で勝利を収めることに貢献した。その後も、順調に成長し、翌シーズンには、セリエAで3試合に出場。UEFAヨーロッパリーグ(EL)には5試合に出場し、ヤング・ボーイズ戦では、強烈なミドルを突き刺して、公式戦初ゴールをマークした。

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