湘南ベルマーレ復帰から1年。田中聡が描くボランチ像
「自分にとって、海外でプレーするのはまだ早かったと感じています」
自らを自虐的に表現したのは、あくまでも2022/23シーズンのこと。自らを「うまい選手は他にたくさんいるなかで、ボールを奪うところや闘うところが自分の武器」と客観視し、チームを勝たせる選手になると公言してきたからこそ、川崎戦を含めて、直近の5試合で2分3敗と勝てない状況に田中は悔しさを募らせる。
「負けないのも大事だとは思うけど、やはり勝ち点3がいまのチームには必要だと思っているので。今日ももちろん勝ちたかったけど、川崎がすごく前からきたなかで思うような形で攻撃できず、チャンスをそれほど多く作れたわけではないし、内容ではかなり押されていて、前半はピンチの方が多かったので」
前半戦を3勝6分10敗の18位で折り返した湘南は、川崎との後半戦の初戦を終えても順位が変わらず、依然としてJ2への自動降格圏から抜け出せていない。中3日で待つ30日の次節はホームのレモンガススタジアム平塚に、勝ち点で1ポイント差の19位で湘南を追う京都を迎える。
敵地・サンガスタジアム by KYOCERAで3月2日に行われた第2節の15分には、冒頭で記したように田中が右CKのこぼれ球をペナルティーエリアの外から蹴り込んで先制ゴールをマーク。後半アディショナルタイムにはFW鈴木章斗が勝ち越しゴールを決めて、湘南がシーズン初勝利をマークしている。
京都もホームに柏レイソルを迎えた後半戦の初戦で、2度のリードを奪いながらともに追いつかれ、2-2のドローに終わっている。今後へ向けて重要な意味をもつ一戦へ、田中が決意を新たにする。
「絶対に勝たなければいけない相手だし、順位を上げていくためにも、勝ち点3しか狙っていない。連戦になるけどいい準備をして、勝利のためにチームに貢献したいと思う」
チームを常に最優先させるからこそ、驚愕のスーパーゴールを決めても、田中がホッとするのは一瞬だけとなる。川崎戦後に「点を取れるボランチはすごく重要だと思うので、そこは狙っていきたい」と自身の存在価値をあらためて思い出したファイターは、6試合ぶりの白星だけを貪欲に追い求めていく。
(取材・文:藤江直人)