カラフィオーリが見抜いた攻略方法
90+7分。クロアチア代表の選手が今かいまかと試合終了の合図を待つ中で、カラフィオーリは左から右へとドリブル。右サイドでMFニコロ・ファジョーリにボールを預けた。
ここでボローニャDFが選んだプレーは、クロアチア代表にとって最も嫌な動きであったと言えるだろう。ヴァトレニのディフェンスは、前線に多数の選手を送り込んだイタリア代表に合わせて[5-5-0]の並行な2つのラインを形成しており、その2ライン間には大きなスペースがある状況。カラフィオーリはこのスペースに走り込んだ。
同選手はファジョーリからパスを受けると、そのままするするとドリブルでペナルティエリア前までボールを運ぶことに成功。イタリア代表のウィングバックが前線に貼りついていたこともあって、クロアチア代表の最終ラインはマンツーマンディフェンスとなっており、ぽっかり空いたスペースから侵入してきたイタリア人に誰も対応することができなかった。ようやくDFヨシプ・シュタロや後ろから追いついた中盤の選手たちがカラフィオーリを囲んだ頃には、ボールは左サイドのザッカーニへと渡っていた。
何よりも、相手選手たちに囲まれた“あの瞬間”にカラフィオーリが素早くフリーになっていたザッカーニを見つけたことが恐ろしい。ザッカーニの力を抜いた正確なシュートは、ゴールに吸い込まれるような美しい軌道だった。カラフィオーリの勇敢な決断と、最終盤になっても落ち着いて相手の弱点を見抜いた冷静な状況判断が、停滞していたイタリア代表の攻撃を動かしたのだと言えるだろう。
成長著しい若きCBがアズーリのグループステージ突破の原動力となった、そう言っても過言ではない。
(文:竹内快)