「チームを動かす」若きCB
中盤の底でゲームメイクするMFジョルジーニョがバストーニの脇まで降りてくると、カラフィオーリが立ち位置を上げて攻撃参加する。これはこの試合で多く見られた現象だ。同選手は中盤のパスワークに絡み、機を見計らってペナルティエリア付近まで駆け上がった。
8分のシーンに注目したい。MFニコロ・バレッラらとのパス交換でよりミドルサード中央に移動したカラフィオーリは、そのまま右サイドに流れてディ・ロレンツォの前方へ。ジャコモ・ラスパドーリの個人技を活かして駆け上がったボローニャDFは、ペナルティエリア内にクロスを放った。
上記のシーンではボックス付近にいる選手が少なかったためにクロアチア代表に対応されてしまったが、カラフィオーリの脅威は対戦相手にとって時間が経つごとに大きなものとなっていく。20分には左WBフェデリコ・ディマルコが空けたスペースに入り、精度の高いクロスをボックス内のFWマテオ・レテギへ。これも得点には結び付かなかったが、大きなチャンスクリエイトとなった。
筆者が90分間、ボローニャで飛躍を遂げたディフェンダーのプレーを追っていて感じたのは、カラフィオーリにとって「縦方向にチーム(ボール)を動かす」ということが常に最優先事項にあるということ。これはクロアチア代表のハイプレスを受けても変わらなかった。
カラフィオーリが卓越した足元の技術と抜群のスピードを持っているからこそ、可能になるプレースタイルだ。中盤に攻め上がれば必然的に相手からのプレッシャーも高まるが、彼は常にドリブルやパスなど、縦への選択肢を諦めなかった。事実、データサイト『Sofa Score』によれば、同選手のパス成功率は93%(57/61)、ロングパス成功率は75%(3/4)を記録している。
後半終盤、イタリア代表は1点を守り切ろうと5バックを敷いた相手に苦戦を強いられた。アズーリの面々の動きが鈍くなっていき、攻撃の質は徐々に低下していく。絶望的な状況の中で、カラフィオーリの攻撃参加がゴールをこじ開けるきっかけとなる。