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Jリーグ 1週間前

水沼宏太の助言、天野純の工夫、喜田拓也の声。横浜F・マリノスの逆転勝利、ピッチで何が起きていたのか【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

「いままでの自分になかった」天野純の新たな引き出し


【写真:Getty Images】


「ヤン(マテウス)とのコンビネーションはチームの強みのひとつだと思うし、その意味でもいかにヤンを気持ちよくプレーさせるのかを意識している。ヤンは感性もあるし、ドリブル突破だけではなくて周りもしっかりと見えているのですごくやりやすい。ヤンの近くに寄るところと、あえて寄らないで1対1を仕掛けさせてあげるところの使い分けもそうだし、そうしているなかで自分にもボールが返ってくるので」

 マテウスとのコンビネーションは、広島の満田が退場になった場面でも実は発揮されていた。

 守護神ポープ・ウィリアムのロングフィードを、自陣の右タッチライン際でマテウスが受ける。そのとき天野は内側のレーンをトップスピードで駆け上がり、マテウスを追い抜いていった。

「ヤンの前にスペースがあったので、そこへ抜け出したら相手のボランチが食いついてくると思っていた。スプリントで上回れる自信もあったし、あとは自分が得意とする1対1で仕掛けよう、と」

 天野の計算通りに満田が追走してきた。もちろん、スプリントでも負けない。一気に相手ペナルティーエリア付近まで迫り、左へ持ち出すと見せかけて切り返した直後に、満田が天野を倒してしまう。池内明彦主審は迷わずに、満田に反スポーツ行為があったとして2枚目のイエローカードを提示した。

 退場を誘発した満田との攻防よりも、自陣から長い距離を駆け抜けたプレーを天野は喜んだ。韓国Kリーグの蔚山現代、全北現代の期限付き移籍した2022、23シーズンで得た財産だと自負している。

「ああいうところは、いままでの自分になかったと思う。ただ、韓国での2年間はああいう動きも出し続けていたので、今年こうして帰ってきて、成長した部分をしっかりと出せたと思っている」

 マリノスは1日の鹿島アントラーズ戦、15日のFC町田ゼルビア戦でともに逆転負けを喫して広島との未消化カードを迎えていた。FC岐阜と対戦した12日の天皇杯2回戦も、後半アディショナルタイムにFW井上健太のゴールで2-2の同点に追いつき、延長戦をへてもつれ込んだPK戦を5-4で制していた。

 特にホームの日産スタジアムに首位の町田を迎えた一戦は、運動量や球際におけるインテンシティーの高さ、攻守の切り替えの速さなどで後塵を拝し続けた。中3日という限られた時間のなかで、今シーズンから指揮を執るハリー・キューウェル監督とともにほどこした修正が奏功したと天野は言う。

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