喜田拓也がチームに共有していたこと
「そこで左足のところに出てきて、歩幅がちょっと合わなかったというか。右足のところに要求できればよかったけど、最後を合わせるところや質を上げていく部分は練習の段階から培えると思うし、あそこに自分が顔を出したところまでのチームとしての崩し方でも、すごくいい面が出た試合だったと思っています」
試合は直後に広島が勝ち越した。マリノスボールのスローイン。手を滑らせたDF渡邊泰基が広島のFW大橋祐紀がカットできる範囲に投げてしまう。まさかのミスで得たチャンスでドリブルを仕掛けた大橋はまずDFエドゥアルドを、ペナルティーエリア内ではMF天野純をかわしてスーパーゴールを決めた。
前述したように、広島は52分に2枚目のイエローカードをもらったMF満田誠が退場処分を受けていた。数的優位に立ったマリノスが勝ち越しゴールを狙い続けた展開で、広島が後半に放った唯一のシュートで勝ち越された。メンタル的にも落ち込み、そのまま敗れかねない状況に追い込まれた。
「でも、人間がやるスポーツなので、ミスはどうしてもあるとチーム全員で共有していた。あそこで顔を下げるなとみんなに声をかけていたし、何よりもあきらめなければ何かが起こる、というのは初めて体験するものではないので。僕たちにはもう後がないと思っていたし、勝つしかないと言い聞かせていたなかで、ロペスの同点ゴールが決まった後も勝ちにいった姿勢は、チーム全員にあったと思っている」
喜田はノックアウトステージ以降の6試合で3人もの退場者を出し、数的不利に陥りながらも決勝まで勝ち進んだACLの経験が生きたと振り返った。熱さをほとばしらせるキャプテンの一挙手一投足に、勝ち越し点にからんでほしい、という指示を受けて、65分から投入されていた宮市も応えた。