ククレジャがキーマンになる理由
【写真:Getty Images】
ククレジャは大会前に解説者のギャリー・ネヴィル氏に「スペイン代表でプレーするには実力が足りていない」と酷評されていた。
元イングランド代表DFの言葉とは対照的に、開幕からの2試合でこの左サイドバックは素晴らしいパフォーマンスを披露している。この試合がスペイン代表での6試合目と、決して代表戦での経験が豊富なわけではないが、攻守に欠かせない選手の一人だ。
先述した通り、現在のスペイン代表はトランジションに重きを置いている。となれば、ボール奪取能力に優れた選手がいればいるほど、トランジションが生まれ、彼らの狙いである速攻が可能となる。
この役割を左サイドバックの選手に求めるのであれば彼が最適だ。イタリア代表戦では対峙したフェデリコ・キエーザを完封。チーム最多の5つのタックルを成功させ、地上戦も8/10勝利と1対1で圧倒した。
彼は対人守備だけでなく予測の部分にも優れており、11分には逆サイドからのサイドチェンジに対して頭でカットし、そのまま味方選手へとパスを繋げて攻撃の起点となった。セカンドボールに対しての反応も早く、ロドリとファビアン・ルイスとともに多くのボールを回収して二次攻撃に繋げている。
このように彼は守備で持ち味を発揮する選手だが、攻撃面での貢献度も素晴らしい。
本来イタリア代表はドリブル突破を得意とするニコ・ウィリアムズに対してダブルチームで対応したかったところだが、それをさせなかったのはこの左サイドバックのサポートがあったから。55分の得点シーンや71分のシュートシーンに代表されるように、ククレジャがハーフスペースあたりにフリーランすることで、質的優位を保ったまま仕掛けることができていた。
ククレジャは苦手なプレーこそあるが、やることを整理すればチームの強みとなる。開幕から2試合での貢献度の高さはチームNo.1だろう。彼が活きるような試合展開が続けば、自ずとスペイン代表は優勝候補の一角に上がってくるはずだ。
(文:安洋一郎)