痛みも苦しみも分かる、先輩の粋な計らい
「喜田くんからLINEをいただいきました。『いっぱい練習してきたから大丈夫だよ』と。それでラクになったというか、楽しむことを考えた。最後に『返信拒否』って書いてあった(笑)」
熱い言葉と少しのユーモアと。自然と前のめりになって当たり前のシチュエーションに、リラックス効果をもたらした。先輩の粋な計らいによって肩の荷が下りたのからこそ、キックオフから迷いなくプレーできた。
メッセージの意図を喜田に聞けば、涼しい表情で言葉が返ってきた。
「彼がどういう気持ちでここまでやってきたかとか、どんな思いを持っているかも近くで見てきて理解しているつもり。一緒にたくさん練習をしてきて、いろいろなポジションをやる中で難しさとか整理しきれないこともあったと思うけど、その状況、状況で最善の練習や頭の整理を話しながらやってきた感覚がある。シンプルに頑張ってきて、というのと思い切ってやってほしいと思った」
痛みも苦しみも、すべて分かっている。キャプテンの包容力が際立つ一幕だ。
試合に出場できない期間がトレーニングで汗を流す日々だったことは言うまでもない。チームがACLを含む過密日程を戦っている最中も、吉尾は自宅と練習場の行き来のみ。中東の地へ飛んだACLファイナルは帯同すらできず、悶々として時間に耐えるしかなかった。
耐えると言えば、練習中もそうだ。本来、トップ下やインサイドハーフを本職としているが、チーム事情は起用ポジションを選ばせてくれない。ゲーム形式の練習で組み込まれるのはもちろん控え組で、負傷などで穴が空いたポジションばかり。岐阜戦で起用されたウイングはもちろんのこと、センターバックでプレーした日もあった。