欧州で感じた「自分にしかわからない悔しさ」
「もっと取れたし、もっともっと重要で記憶に残るゴールを決められると思ってプレーしてきた。そういった貪欲さや満足できないメンタリティーがあったからこそ、記録として残っているのかなと思う」
強く印象に残るゴールのひとつとして、岡崎はレスター・シティが奇跡の初優勝を果たした2015/2016シーズンの第30節、ニューカッスル・ユナイテッド戦で決めた華麗なオーバーヘッドキックからの得点をあげた。もっとも、世界中のメディアやサッカーファンから称賛された当時の状況が理由ではなかった。
「プレミアリーグに移籍してレスターにフィットする上で、自分のハードワークやチームの潤滑油になる動きを真っ先に認められてしまったがゆえに、45分や60分で代えられる試合もめちゃくちゃ多かった。その悔しさは自分しか知らなかったというか、周りはおそらくわかっていなかった。じゃあ、何をもって自分を証明するのかといえば、やはりゴールしかなかった」
「ストライカーとしてゴールを取りたい、という思いとはまた別に、周囲を見返したいというか、監督や他の選手たちが『岡崎はこういう選手だ』と思っていた枠を越えたいと思っていた。自分の反骨精神を象徴するゴールのひとつだったといまでも思っている」
身長174cm体重76kgとサイズに恵まれているわけではない。著書のひとつには『鈍足バンザイ!僕は足が遅かったからこそ、今がある』(幻冬舎刊)とやや自虐的なタイトルもつけられている。異彩を放つ20年のプロのキャリアから、サッカー少年や少女たちへ送るメッセージがあれば。岡崎は迷わず答える。
「めちゃシンプルかもしれないけど、あきらめるな、と。そのひと言だと思う。絶対に認めない、絶対にあきらめないという思いでやってきた結果、自分が苦手としていた部分も通常レベルまで押し上げられたし、そのおかげで得意としていた部分も伸びていった。あきらめるときは本当に勝手に訪れるものだと自分でも今回経験したし、その意味でもそのときがくるまではあきらめずに、考えて、考え抜いた方がいい」