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Jリーグ 3週間前

「ここでいかなかったらオレたちじゃない」FC町田ゼルビアを立て直した昌子源の言葉「積み重ねてきたサッカーを…」【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

「ラフプレーをしたくてしているわけではない」



 逆転ゴールから4分後の61分。自らの突破からマリノスのMF天野純に倒され獲得した直接フリーキックを、鮮やかに決めてダメ押しゴールを奪ったのはボランチで先発していた下田だった。

「もうちょっといいコースに蹴りたかったんですけど…それでも相手のゴールキーパーの立ち位置と自分が蹴れるコースを考えて、壁を越えればいけるかな、という感じで蹴りました」

 ゴール中央から見て右側、距離にして約20mの位置から利き足の左足を一閃。ゴール右隅へ吸い込まれたカーブの軌道を描かせた一撃に、ポープのダイブも届かなかった。それでも下田は「映像を見たら、もうちょっと右側を狙えたかな」と完璧を期しただけでなく、蹴る際にはちょっとした駆け引きも演じている。

 実際にファウルを受けた場所から、蹴るポイントをちょっと下げた意図を下田はこう語っている。

「また『せこい』とか言われそうですけど、駆け引きというか、やはり壁が高いので。ちょっとでも、ボール半個分でも後ろから蹴ると、その差が大きくなるかな、と。あとは勘弁してください」

 昌子や藤尾、平河とともに下田も筑波大戦ではベンチ入りしていなかった。川崎フロンターレに在籍していた2018、2020シーズンのJ1リーグ優勝と、2019シーズンのルヴァンカップ制覇に貢献した32歳のベテランは、筑波大戦から中2日で迎えるマリノス戦をこう位置づけていた。

「選手も感じるところがたくさんあったと思うけど、ネガティブになりすぎずに、負けは負けだと全員で受け止めて、その上で自分たちが積み重ねてきたサッカーを証明したいと意識していた。僕も記事やSNSでいろいろな声を聞いて、正解はないというか、いろいろな考え方や受け取り方があるなかで、僕たちはピッチでしっかりと表現するというか、町田ゼルビアのファン・サポーターの方々が胸を張って応援できるような試合がしたいと思っていた。相手チームを含めて、ラフプレーをしたくてしているわけではないので」

 実は試合前に組まれた円陣のなかで、昌子は「怪我をした4人の思いを背負って」とはまったく異なる言葉もチームメイトたちにかけている。リーグ戦で約2カ月ぶりに先発したバイロンが明かす。

「いろいろと世間で騒がれているけど、ここで(厳しく)いかなかったらもうオレたちじゃないと。そんなプレーじゃ絶対に勝てないと、源くん(昌子)は鼓舞してくれた」

 天皇杯敗退を引きずり、町田の一丁目一番である球際におけるインテンシティーの高さが影を潜める戦いだけは許されない、というキャプテンの檄。14分にFW宮市亮のスーパーゴールで先制されても下を向かず、絶対に追加点を許さず、もうひとつの武器である攻守の切り替えの速さやセットプレーからの得点力を前面に押し出した町田は、今シーズン12勝目で初めてとなる逆転勝ちをもぎ取った。

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