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Jリーグ 2週間前

冨安健洋の凄さは映像に映らない。坪井慶介が言語化する2種類の守備「スペースは点を取らない」【元サッカー日本代表のDF論】

シリーズ:コラム text by 舞野隼大 photo by Getty Images

FC町田ゼルビアの「奪いにいく守備」。「ディフェンスは大きく2種類ある」


 ブロックを敷いた守備でも同じことが言えます。細かい話になっちゃいますけど、ブロックを敷く理由は、誰かがプレスしに出た時にすぐそのスペースを埋められるからです。ブロックを作っているだけなら別にそこに立っているだけでもいいので、そんなに難しいことじゃない。

 難しいのは、そこから奪いにいくこと。奪いにいくためには、綺麗に作ったブロックを崩して、それをすぐに埋めるということができないと意味がないと思っています。それが負けている状況なら、なおのことですね。

 堅守のFC町田ゼルビアも、奪いにいく守備をしています。例えばSBが前へ奪いにいって、CBとの距離が広がっても、ボランチが降りてそこを埋めている。そのボランチがいた場所に今度は前の選手も帰ってくるという修正がすごく早い。

 自分が寄せることでどこが空くかというのをちゃんと判断して考えていたのが、セルヒオ・ラモスでした。この場面、セルヒオ・ラモスが早く縦を切ってシュートコースに入ってしまうと、相手の9番に繋がれてしまいます。だから、あえてスピードを緩めて中のコースを消してからボールホルダーに寄せていた。この一連の動きはすごいと思います。

 ディフェンスは大きく分けて、ゴールを守るための守備と、奪いにいくための守備の2種類があります。最終的には攻撃に転じなければいけませんが、流れを読んで2種類のディフェンスを使い分けることが大事です。

 自分たちにリズムを手繰り寄せるためにハメにいったとしても、プレスを2つ3つ剥がされて相手のリズムになってしまっていたら、僕は引いて我慢すべきだと思っています。その見極めがとても難しいですけど、試合を見る上でもそうしたところを注目してみると、よりサッカーがおもしろくなると思います。

(構成:舞野隼大)

プロフィール:坪井慶介(つぼい・けいすけ)


【写真:編集部】

1979年9月16日、東京生まれ。四日市中央工業高校、福岡大学を経て、2002年に浦和レッズに加入。ルーキーイヤーにリーグ戦30試合に出場し、新人王、フェアプレイ賞、ナビスコカップニューヒーロー賞を受賞し、翌年には日本代表、Jリーグベストイレブンに初選出される。06年にはFIFAワールドカップドイツ大会に出場するなど、日本代表として通算40試合に出場。15年から湘南ベルマーレ、18年からレノファ山口FCでプレーし、19年限りで現役引退。現在は日本代表、Jリーグ、プレミアリーグなどで解説者を務める傍ら、タレントとしてテレビなどのメディアにも多数出演している。

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【了】

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