クロアチア代表に突かれたスペイン代表の弱点
ただ、スペイン代表は試合にこそ勝利したが、完全に支配するには至らず、シュート本数はクロアチア代表が16本と相手に上回られた(スペイン代表はシュート11本)。
その要因の一つが、ライン間に立たれた相手選手への対応の甘さだ。
確かにクロアチア代表の選手が裏抜けをみせることで最終ラインが押し下げられ、相手が意図的にライン間を作り出したシーンもあった。ただ、それ以外の場面でも中盤より前とDF陣の意思疎通ができていないのか、最終ラインを上げ切れておらず、自動的にライン間が多発している。
15分過ぎからは前線の強度が落ちたことでクロアチア代表の選手たちが余裕を持ってビルドアップすることができるようになり、マテオ・コバチッチやアンドレイ・クラマリッチらにライン間でボールを受けられて、多くのシュートチャンスを許してしまった。特に前半はこの形が悪目立ちしている。
流れが悪い時間帯でも、奪ってから縦に速くゴールを決め切れたのは流石なのだが、前からのプレスが緩くなってからの対応には課題を残していると言える。無失点に抑えられたのはウナイ・シモンのビッグセーブやクロアチア代表の決定力不足にも助けられたからであり、優勝候補に挙げられる強豪国は少しの隙も逃してくれないだろう。
ただ、補足したいのは、スペイン代表の守備陣もライン間への対応以外は反応が良かった。シンプルなロングボールはCBのロビン・ル・ノルマンが中心となって跳ね返し、両サイドからのクロスはダニエル・カルバハルとマルク・ククレジャの両SBが中央に絞って最後のところでは仕事をさせなかった。
総合すると、この試合はスペイン代表の「長所」と「短所」が出たゲームであり、まだ彼らの強さが本物とは言い切れない。
スペイン代表はグループリーグ第2節で前回大会王者イタリア代表と対戦する。この試合の内容と結果次第で、今大会におけるラ・ロハが優勝候補なのか、それともそれを下回る実力なのか、今大会における立ち位置がわかるかもしれない。
(文:安洋一郎)