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日本代表 4か月前

右WBが「ベストになるかも」サッカー日本代表、堂安律の進化。「守備がうまいね」と言われるまでのストーリー【コラム】

シリーズ:コラム text by 元川悦子 photo by Shinya Tanaka

「これで調子に乗ったらアジアカップみたいに…」

堂安律
【写真:Getty Images】



「あの時はハードワークの重要性には気づいていなかったですね。(監督の)吉武(博文)さんのサッカーには賛否両論がありましたけど、今、少しずつ彼の言ってることを理解できている。当時の吉武さんはSBが中に入ることも言っていたし、ちょっと先に行っていたのかな」としみじみ言う。

 10年前のアジア予選で彼らは韓国に敗れて世界切符を逃したが、冨安、田中碧含めて3人が現代表として攻撃的3バックのけん引役になっているのは特筆すべき点。堂安も献身性の素養を当時から養っていたはずだ。

 その後、ガンバ大阪、フローニンゲン、PSV、ビーレフェルト、フライブルクと環境が変わり、サッカースタイルや要求される仕事も変化したが、堂安が攻守両面の幅広い役割をこなせるアタッカーに変貌したのは事実だ。「ドイツに行って一番変わったこと? フライブルクでは守備の選手が(僕に)『守備がうまいね』と言っているんで(笑)、相手が何をされたら嫌か分かるのかなと。これからキャリアを重ねていくうえで、ここ(右WB)がベストポジションになるかもしれない。楽しさを見つけながらやっていきたい」と彼自身も大いにやりがいを覚えている様子。その布石をシリア戦前半に打てたのは朗報だ。

 後半になって日本は4バックにスイッチ。堂安も代表でやり慣れた右FWに陣取ったが、久保、南野拓実と臨機応変に立ち位置を変えたり、中に入ったりとより攻撃を意識して、フルタイム出場。日本の5-0の勝利に貢献した。

 この2連戦で彼は右シャドー、右WB、右FWの3つのポジションをスムーズにこなし、最終予選に弾みをつけたと言っていい。とはいえ、来季のフライブルクは指揮官が変わるため、どういう扱いをされるか未知数なところもある。最終予選になれば、2次予選とは比べものにならないほど対戦相手のレベルも上がる。そのあたりを踏まえながら、今回やったことをよりブラッシュアップさせることが必要になるだろう。

「厳しく言えば、今回のシリーズは勘違いしちゃいけない。それを自分たちに言い聞かせなくちゃいけないし、これで調子に乗ったらアジアカップみたいにやられちゃう。あの悔しさは自分も痛いほど分かってますし、今日もハーフタイムに厳しい声をかけ合った。みんながよくなろうと一緒にやってるんで、(この先を)楽しみにしてほしいですね」

 いかにも彼らしい言い回しで楽観ムードに警鐘を鳴らした堂安。日本の10番には、ハードワークと凄みを兼ね備えた絶対的エースになってもらわないと困る。ここからの大いなる進化に期待したい。

(取材・文:元川悦子)

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【了】

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