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Jリーグ 3週間前

鹿島アントラーズが装備する「破壊する仕組み」。世界のセオリーに沿ったプレッシングのメカニズム【戦術分析コラム】

シリーズ:戦術分析コラム text by らいかーると photo by Getty Images

鹿島アントラーズが苦手とする局面「今後の課題としては…」



 プレッシングに目を向けると、鹿島はハイプレッシングを苦手としている。鹿島といえば、伝統的にマンマークで目の前の相手に負けない守備が根強く、その部分は今も色濃く残っている。そのため、ボールを果敢に奪いに行く試みを頻繁に行うのだが、ファーストディフェンダーがあっさりと剥がされると、一気にピンチになる傾向がある。

 このファーストディフェンダーは、ボールの奪いどころとして設定されることの多い相手のサイドバックと対面するサイドハーフになってしまう事が多い。スタメンで出場する師岡柊生、仲間隼斗は特に問題がないが、交代で出てくる選手たちはこのデュエルで後手に回ってしまうことが多いのが難点だ。

 カウンターなど、相手も整理されていない状態では素の強さが試されるので、知念、佐野がボール奪取力をみせつけることができる。しかし、前から順々に剥がされていく状況だと、さすがのボールハンターコンビでもどうしようもない。つまり、ボールを無理矢理に奪いにいかないほうが現状の鹿島は後方の守備力を活かすことができる状態となっている。

 チャブリッチだけは守備に目を瞑っても起用する価値のあるスーパーサブとして機能しているが、他の選手は後半に登場しても効果的ではない試合が続いている。ポポヴィッチもこの現状を完璧に把握しているようで、サイドハーフにはできるだけ長い時間を名古、師岡、仲間の3人で乗り切る計算になってきている。2トップで追いきれないときに、サイドハーフの選手が走力でカバーすることの賛否はあるかもしれないが。

 今後の課題としては、ベンチに座っている選手たちがほとんどゲームチェンジャーとして機能していない現状をどのように解決していくか、だろう。ボールプレーヤーとサイドアタッカーがベンチに多く控えているが、終了間際をリードした状態で迎えることの多い鹿島にとって必要なことは、組織の一員として守備をすることである。彼らがスタメン組ほどの守備をできるようになるのか、それとも裏返しで個性を発揮できるようになるかが、これから灼熱の季節を迎える中で、鹿島にとって重要なポイントになるのではないだろうか。

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