「彼らの場所を用意しておきたいとも思う」
【写真:Getty Images】
「経験値やチーム力も含めて、僕たちよりもはるかに上の相手だし、だからこそいまの順位に関係なくリスペクトの思いをもって臨みたい。AFCチャンピオンズリーグ(ACL)でも決勝に進んだ強いチームに、ましてやアウェイでどこまで戦えるか。自分たちのすべてをしっかりとぶつけられるように、いい準備をしたい」
7月2日にはルヴァンカップのプライムステージの組み合わせ抽選が行われる。プレーオフラウンドを勝ち抜いた町田、北海道コンサドーレ札幌、名古屋グランパス、新潟、広島の5チームにACLノックアウトステージに出場していたマリノス、川崎フロンターレ、J2のヴァンフォーレ甲府が加わる。
「ベスト8入りしたのは、チームにとってかなり大きい。町田の歴史的にも新たな1ページを作れたし、もちろんタイトルを狙える位置にいるのならば、やはり狙っていきたい」
クラブの歴史上で初めてとなるタイトル獲得を、昌子はしっかりと視野に入れた。その上でGK谷晃生が森保ジャパンに、MF平河悠とFW藤尾翔太がパリ五輪を控えたU-23日本代表に、FWオ・セフンが韓国代表に招集され、2戦とも不在だった陣容で戦ったセレッソ戦を踏まえてこんな思いも明かした。
「代表の彼らがルヴァンカップに帰ってこられるとしたら多分、決勝になりますよね。決勝といってもそんなに簡単じゃないのはわかっていますけど、それでも彼らの場所を用意しておきたいとも思う」
現時点で決勝の日程は未定だが、準々決勝は9月の、準決勝は10月の国際Aマッチデーでリーグ戦が中断される期間にそれぞれ開催される。少年サッカーの町、町田に生まれた市民クラブを原点とするチームが歴史を変える瞬間に、ゼルビアに関わる全員で臨みたい。昌子の熱い思いが伝わってくる。
密かに狙ってきたゴールを、昌子が喜んだのはほんの一瞬だった。次のステージへ歩を進めたなかでも反省材料を見つけ出し、まだまだ成長できると信じて一途に前へと進む。開幕前の下馬評を覆し、リーグ戦でもカップ戦でも快進撃を続ける町田の強さの秘密が、昌子の立ち居振る舞いから垣間見えた。
(取材・文:藤江直人)