「決めた瞬間はみんなが…」
「あのときは(大岩)剛さんが鹿島の監督で、アウェイで、相手を(フェイントで)一回飛ばして」
当時を再現すれば、右コーナーフラッグ付近で獲得した直接フリーキックをMF遠藤康が後方へ下げて相手を揺さぶる。すかさずMF永木亮太がクロスを放つ。DF犬飼智也の右足をかすめ、DF西大伍の胸にあたってはね返ったボールは昌子の目の前に転がってきた。しかし、すぐにシュートを打たない。
フォワードも顔負けのシュートフェイントに、仙台のDF平岡康裕とDF大岩一貴がその場に崩れてしまう。次の瞬間、昌子は体勢を崩しながら右足でコントロールショットを放つ。ゴール右隅を射抜いた技ありの一撃に、代表デビューを果たしたばかりのGKシュミット・ダニエルのダイブも届かなかった。
当時と比べて華麗でもないし、カッコいいとも言い難い。もちろん狙ってもいない。それでも無我夢中でボールの落ち際に詰めた末に生まれたゴールの直後に、昌子は全身で喜びを爆発させている。
「町田で決めた初めてのゴールですし、チームのみんなも(祝福に)駆け寄ってきてくれたし、素直にうれしかったですね。特にチームの2点目というのもあったので、決めた瞬間はみんながちょっと楽になるというか、気持ち的にも少し余裕が生まれるゴールになったと思ったので」
2018シーズン後にフランス、リーグ・アンのトゥールーズへ移籍し、2020年2月にはジュニアユースまで所属したガンバ大阪へ加入。昨シーズンは古巣・鹿島へ復帰し、今シーズンからはJ1へ初めて昇格した町田へ完全移籍。リーグ戦の折り返しも目前に迫るまで、無得点が続いていたと昌子が知ったのはつい最近だった。