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2015年10月にリバプールの監督に就任したユルゲン・クロップは、在任9シーズンの中で様々な変化をもたらし、輝かしい実績と功績を残した。クロップ政権下のリバプールを戦術的に記した2万字に迫る長編コラムから一部を抜粋し、モハメド・サラーら3トップが躍動した17/18シーズンを取り上げる。(文:結城康平)
フィルミーノの重用とゲーゲンプレッシングの性質(17/18)
新戦力が躍動したリバプールは、昨年までのチームを大きく底上げすることに成功する。ゲーゲンプレッシングからのカウンターは鋭く、サラーは開幕からゴールを量産してプレミアリーグで32ゴール。得点王に輝いた彼がチームを爆発させることで、リバプールの歴史に残る3トップが完成する。
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フィルミーノは創造性と献身性を兼ね備えながらハイプレスのスイッチとなるだけでなく、そのブラジル人らしいトリッキーなプレーで両WGをサポート。そこから両WGがゴールを狙うシステムは、これまでのリバプールでも中心選手だったコウチーニョへの依存からの脱却を可能にする。
パンチ力があるミドルシュートと創造性を武器にしたブラジル人アタッカーを1億4000万ユーロ(約196億円)で冬にバルセロナに売却したことは、リバプールにとって理想的なビジネスだった。一方でバルセロナ移籍後、コウチーニョはそれまでの輝きを失ってしまい、怪我に苦しむことになる。
創造性のある選手よりもタフな快速アタッカーを重視したのは、クロップらしい決断だった。同じブラジル人でも、クロップはプレーにムラが少なく、戦術的に幅広い仕事を担えるフィルミーノを重用していた。「ゲーゲンプレッシングこそが、最高のゲームメイカーだ」というのはクロップの言葉だが、彼らは1人のゲームメイカーに頼るゲームモデルではなく、激しいプレッシングで相手からボールを奪うことで直線的なショートカウンターを狙うというアプローチに少しずつシフトしていた。
これこそが自らも司令塔として知られ、自分のチームでも多くの司令塔を重用してきたペップ・グアルディオラとの最大の違いだろう。グアルディオラのチームにはセルヒオ・ブスケツやロドリがおり、チームの意思をコントロールする役割を担ってきた。
彼らの柔軟性と戦術眼は攻撃のバリエーションを支えたが、一方で彼らがいないチームは脆くなってしまい、ブスケツの穴を埋めるというのは不可能なタスクになってしまった。同時に現在のマンチェスター・シティであっても、ロドリがいないと一気にチームとしての一体感を欠いてしまう。23/24シーズンにおいても、グアルディオラのチームが最も苦しんだのは「ロドリ不在時」だった。個に依存してしまうチームではなく、クロップはプレッシングというチーム戦術を最大限に活かすことで負荷を分散する手法を好んできた。
(文:結城康平)
【この記事は一部抜粋したものです。記事全文ではユルゲン・クロップがリバプールの指揮を執った約9年間の変遷を、戦術的な視点で詳細に記しています】
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