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【クロップ監督とリバプールの戦術史1】就任直後に植え付けた「シンプルなプレー原則」。「ボール狩り」のルールとは?

text by 結城康平 photo by Getty Images

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2015年10月にリバプールの監督に就任したユルゲン・クロップは、在任9シーズンの中で様々な変化をもたらし、輝かしい実績と功績を残した。クロップ政権下のリバプールを戦術的に記した2万字に迫る長編コラムから一部を抜粋し、15/16シーズンの就任直後にチームに課したプレッシングのルールを取り上げる。(文:結城康平)

クロップ
【写真:Getty Images】


クロップがリバプールに植え付けたシンプルなプレー原則(15/16)

 後にレスター・シティでも成功したブレンダン・ロジャースの後を継いだクロップは、2015年の10月にリバプールの監督に就任する。どちらかというと穏やかなフットボールを好み、ポゼッションベースのスタイルをチームに浸透させる監督だったロジャースと比べ、鋭いトランジションを武器にするクロップのスタイルは熱狂的なリバプールのファンにも好意的に受け入れられた。

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 デビューシーズンのリバプールは、前任者ロジャースのチームと比べて「積極的に守備をする意識を持つチーム」として復活した。デビュー戦の相手となったのは、マウリシオ・ポチェッティーノが率いるトッテナム。クロップのゲーゲンプレッシングと比べるとプレッシングを仕掛けるエリアは低いが、密度を高めた中盤の強烈なプレッシングを武器にしたチームだ。 

 既にサウサンプトンでも中盤の整備に成功し、プレミアリーグでも実力を証明していたポチェッティーノのチームに、初戦からリバプールは激しく「ボール狩り」を仕掛ける。当然ながら監督としての準備期間が短い中で、クロップがチームに意識させたのはプレッシングのトリガーだった。

 ロジャース時代はボールの奪い方が不明瞭になっていたチームに、クロップは「相手が後ろを向いて受けたら、複数枚でのプレッシングを仕掛ける」というシンプルなプレー原則を与えた。まだまだ未熟ではあったが、その意識の変化はチームのポテンシャルを開花させようとしていた。

 統計データもその変化を如実に表しており、守備のデュエル数が飛躍的に増加した。守備のデュエル数は、デビューシーズンとなったプレミアリーグの終了時に3番目に多かった。

 リーグの順位は8位でシーズンを終えた彼らはサウサンプトンやウェストハムよりも順位が下だったが、クロップの影響力は明らかだった。リバプールはボールをロストした後に迅速にプレッシングを仕掛け、相手のカウンターを妨害しながらショートカウンターを狙う。どちらかというと創意工夫しながらフォーメーションを変えていったロジャースと比べると、クロップは組織とスタメンを大きく弄らなかった。ベースになったのは4バックで、4-3-2-1と4-2-3-1が多かった。

 そしてシーズンが進んでいく中で、クロップは幾つかのプレッシングにおけるルールを仕込んでいく。最も頻繁に使われたのは、サイドに追い込んだ相手に唯一「インサイド」のパスコースを与え、その選手が外側を向いてボールを受けた瞬間に複数枚でプレッシングを狙うというトラップだった。

(文:結城康平)

【この記事は一部抜粋したものです。記事全文ではユルゲン・クロップがリバプールの指揮を執った約9年間の変遷を、戦術的な視点で詳細に記しています】

【了】

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