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「勝ち急がない」なぜ三菱重工浦和レッズLは連覇できたか?「塩越柚歩なら…」楠瀬直木監督は将来を見越して起用する【コラム】

シリーズ:コラム text by 佐藤亮太 photo by Getty Images

楠瀬直木監督の持論「勝ち急がない」


 2022/23シーズンは池田咲紀子、長船加奈、栗島朱里、高橋はなの4名が怪我による長期離脱、2023/24シーズンは猶本光、安藤梢の2名が同じく怪我による長期離脱と、主力選手を欠くなかの戦いを強いられた。そんな状況にもかかわらず、浦和はなぜ連覇という偉業を成し遂げられたのか。

「勝ち急がない」。楠瀬監督の第一声はこうだった。

「勝ちを先にもってくると、選手を当てはめてしまいます。持論ですが、サッカーはいったい誰がやるのか? やるのは選手です。限られた選手のなか、戦術に人を当てはめるより、選手がどのような人物か、どんな生い立ちなのか、その先の将来をどう目指すかを一緒に歩んでいかないといけません」

 選手の特長に対して機械的にポジションや役割を与えるのではなく、どう選手を成長させるのかを重視し、選手起用に活かしている。

 実際に、2023/24シーズン前半戦はボランチ起用だった塩越柚歩を後半戦は本来のトップ下で起用するとリーグトップの9アシストを記録。また、これまで途中出場が多かった遠藤優を右サイドバックで起用。得意のドリブルを生かしたプレーが光り、WEリーグのデータでは『1対1のドリブル成功率』はリーグトップの70.6%。さらにチームでもっとも出場時間が長い選手となった。

 右サイドバックの遠藤優が速さなら、左サイドバックの水谷有希は中盤ならどこでもプレーできる器用な選手だけに、高い技術と戦術眼が活かされた。またINAC神戸から加入した伊藤美紀は主戦場をボランチから左サイドへ。よりゴールに近いポジションになったことから自己最多のリーグ6得点をあげた。

 起用の狙いを楠瀬監督はこう解説する。

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