「キミ(濃野)が点を取れている大きな要因として…」
「チームとしての形が見えたワンシーンなのかなと。左でタメを作って、右にボールが流れてきてっていうのは、今の『鹿島の形』としてあると思います。自分は『前のスペースにどんどん出て行け』と言われていて、名古君がダイアゴナルに走って相手DFを引き付けてくれて、僕の前にスペースがめっちゃ空いたんで、信じて入っていって思いっきり振ったら入りましたね」
実を言うと、左の仲間からのボールに濃野が反応した開始7分の決定機など、この得点シーン以外にも「左で作って右で仕留める」という形は試合を通して何度か見られた。それが今の重要な攻撃パターンになりつつあるのは間違いない。そこは鈴木優磨も指摘する点である。
「キミ(濃野)が点を取れている大きな要因として、今年の(安西)幸輝のパフォーマンスがすごくいいこと。ビルドアップに関しては正直、幸輝に依存してるところがあると思います。左で幸輝がタメを作れるから、後ろの選手も安心して預けられるし、相手も飛び込んで来られない。そのビルドアップがうまくいってるおかげで左から崩せて、公人が取れていると思いますね」と背番号40は安西の貢献度の高さを改めて強調した。彼と仲間、ボランチの知念らの連動性が高まっていることも、5月以降の快進撃の一因になっていると言えるだろう。
濃野の一撃の後、鹿島は関川がリスタートから3点目をゲット。後半アディショナルタイムに植中の一発を浴びたものの、3−2で逆転勝利し、勝ち点3を上積みすることに成功した。町田がアルビレックス新潟に負けたこともあり、勝ち点35で並ぶところまで辿り着き、6月の代表ウィークの中断を迎えることになった。
殊勲の濃野も「U-23日本代表入りするのではないか」と評判が高まり、本人も少し期待していたようだが、結局は選外に。AFC・U-23アジアカップ(カタール)を戦った関根大輝(柏)や内野貴史(デュッセルドルフ)らをごぼう抜きするには至っていないという現実を突きつけられた様子だ。
「選外になったのが、守備の不安定さという弱みが大きいのかなと。日本を代表して世界と戦うという意味ではまだまだ力不足なのかなと思います。1人で守れて1人で攻めれる選手じゃないとやっぱり日の丸を背負えない。自分を磨いていくしかないですね」
神妙な面持ちで背番号32はこう語り、試合の空く2週間でさらなる自己研鑽を図るつもりだ。鹿島としても日程が空くことをプラスに捉え、より攻守両面のブラッシュアップを図ることが重要になってくる。「今、やってることの精度や質を上げて、強度も積み上げていくしかない」と鈴木優磨も語気を強めたが、それを地道にコツコツ続けることが、常勝軍団復活につながるはずだ。
(取材・文:元川悦子)