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「BoS理論」が現役Jリーガーに与える影響。「監督が何を志向し、何を求められているかを理解する」【コラム】

シリーズ:フットボール批評オンライン text by 岡田優希 photo by Getty Images

現役Jリーガーが「BoS理論」を読むと…



 本書は当初「フットボール批評」において「現代サッカーの教科書」として2021年10月号から連載が始まり、私は初回から欠かさず読んでいた。

 私はこの3年間で、テゲバジャーロ宮崎、ギラヴァンツ北九州、そして現在は奈良クラブでプレーしている。近年J3では現実的な戦い方をするチームが増え、アタッカーにも守備の仕事が多く課されるようになってきた。

 当然それぞれのチームのスタイルやコンセプトがあり、守備の戦術は異なっているが、自分の中に「BoS理論」の基準があることで、監督が何を志向していて、どのような振る舞いが求められているかをスムーズに理解することができた。

 もちろん「Bos理論」の全てがそのまま実際のピッチに当てはまる訳ではないし、その中でのトライアンドエラーはあるが、基準があることでオートマチックにプレーすることができていると感じている。それによってどのチームでプレーしたとしても、開幕戦からコンスタントに出場機会を得ることができている。

 サッカー界において「言語化」することの重要性は数年前から認知されてきているが、このように自らに適した戦術や知識を取り入れることは、ピッチ上において必ず助けになると考えている。

 そういった観点から、本書は海外のサッカーファンの方や指導者だけでなく、プロアマ問わず現役の選手にもおすすめしたい。本書を読めばピッチでの景色が変わり、フットボールをより攻撃的に楽しむことができるようになると確信している。

 本書ではあとがきに、「今に集中すること」の大切さを説いている。

 そして「今」とは「BoS理論」における「ボール」であり、ボールにオリエンテーションすることで人生の在り方も変わってくると述べる。

 先行きの見えないこの時代、「ストレス社会」と言われ、「今」にフォーカスできないことが様々な不安や閉塞感を生み出している。そんな中でスポーツのもつ意義は大きく、老若男女立場を超えて熱中できる数少ないエンターテイメントの1つである。

 日本サッカーの発展は諸外国と比較しめざましいものがあるが、「今」にフォーカスする「BoS理論」をもとに、選手が躍動する「超攻撃的」なサッカーが数多く展開されるようになれば、サッカー界のみならず日本社会に大きな貢献ができると考えるのは夢を見過ぎだろうか。

 そして何より私自身は現役のプレーヤーとして、「今(ボール)」にオリエンテーションし、攻撃的かつ積極的な姿勢をもって、ピッチで闘い続けたい。

<書籍概要>

『サッカー「BoS理論」
ボールを中心に考え、ゴールを奪う方法』
河岸貴 著
定価:1,980円(本体1,800円+税)

日本には「Ballgewinnspiel:ボールを奪うプレー」が圧倒的に足りていない!!

「ボールを中心に考えていない」日本のサッカーと、「ボールを中心に考えている」世界のサッカーは「違う競技」である――。いまだ、日本のサッカー界には、ボールを中心に考え、ゴールを奪う方法論「BoS(ベーオーエス)理論」(Das Ballorientierte Spiel:ボールにオリエンテーションするプレー)が足りていないのが現状だ。本書では、ドイツ・ブンデスリーガの名門シュトゥットガルトで指導者、スカウトを歴任した著者が、日本のサッカーの現状を直視しながら、「BoS理論」におけるボール非保持時の部分、「Ballgewinnspiel:ボールを奪うプレー」の道筋をつける。

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【了】

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