日本には「なぜ」が欠けている
さらに本書はチャンピオンズリーグやJリーグの実際にあったシーンを「BoS理論」をもとに解説し、理論だけではなく実際のサッカーシーンにおいてどのように考えるべきか、アクションを起こすべきなのか、事細かく解説している。
また近年では、日本サッカーにおいても「ゲーゲンプレス」、「即時奪回」、「ツヴァイカンプ(ドイツ語での1対1)」など、ドイツサッカーの用語が頻繁に使われるようになっている。そういった背景から巷にはドイツサッカーに関する本や情報に溢れ、言葉だけが一人歩きしている状況にある。
しかし、本書はそういった現状に警鐘を鳴らしており、「日本にはなぜそれらをやらなければいけないのか、の『なぜ』が決定的に欠けています。」(p21)と主張する。
例えば、「相手にボールを奪われた場合、日本の切り替えは、いかに早く自陣に戻るかという名目で使われることが多く、逆にドイツの切り替えは、ボールを奪ってゴールをするという考えなので、いかに速くボールを奪うかという名目になります。」(p21)と具体例を挙げ、「ボール非保持→ボール奪取→シュートとなる11人による常時攻撃態勢のドイツとは違い、日本は一旦守備をしてから『よいしょ』と攻撃に移り、そこからシュートという流れに見えて仕方がありません。」(p27)というような、日本とドイツでの試合におけるフットボールに対する態度の違いに言及している。
さらに、私は現役の選手として、本書のような体系立てられた守備戦術を学ぶことは非常に有意義だと感じている。
なぜなら、自分の中に基準をもつことができるからである。
プロアマ問わず、毎年監督や選手はフレキシブルに入れ替わり、どんな戦術でも、どんな選手とプレーすることになっても結果を出すことが求められる。
その時に自らの基準がなければ、環境が変わる毎にゼロから構築しなければならず、適応に時間がかかってしまう。しかし基準を持っていれば、新たな戦術だとしても、その相違を感じることによって適応を素早くできるだろう。
実際に私自身のプレーにおいても、「BoS理論」は非常に大きな影響と助けを与えてくれている。