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海外サッカー 1か月前

「自分としては…」南野拓実が大きく変わった2つの要因。“失敗”を経て…「チャンスだと感じていた」わけ【現地発コラム】

シリーズ:コラム text by 小川由紀子 photo by Getty Images

「9点取れたっていうことよりも…」



「9点取れたっていうことよりも、9点しか取れなかった。それよりもっと取れるように改善はできると思ってます」と、自身が目指す設定値は高い。最後に相手GKがちょこっと触ってオウンゴールになったような惜しいシュートも何度かあり、2ケタ得点は軽く実現できたくらいにゴールに絡んでいたから、余計惜しい気持ちもあるだろう。

 ただ、見ている側の評価は一変した。とりわけ重要な試合で決定的な仕事をするという点において、南野は並々ならぬ貢献をしている。

 昨年については辛口だったモーモン記者も、「RCランス戦での彼の決勝弾、あれは殊勲ものだった」と絶賛する。

 南野がアジアカップで不在だった年明けの2試合で1敗1分と失速したモナコは、続くル・アーブル戦にも引き分け、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場圏外の5位に転落。リールやレンヌといった実力派チームとの攻防戦に巻き込まれていった。モーモン記者が挙げたRCランス戦は、そんな渦中の23節、勝ち点2差で追われる相手との、負ければ順位逆転という直接対決だった。

 この試合で南野は、記録こそ相手GKのオウンゴールとなったが、貴重な2点目をもたらすと、2-2に追いつかれて迎えたアディショナルタイム、右サイドから鋭いドリブルでペナルティーエリアに切り込み、マッチアップした相手をかわす鮮やかなトラップから見事な左足ボレーを突き刺した。ラストミニッツに勝ち点3を手に入れたこの瞬間の、ヒュッター監督やスタッフたちの興奮ぶりといったらすさまじかった。

 この勝利でCLストレートインの3位に再浮上したモナコは、4月に行われた30節で、1点差で追う2位のブレストとふたたび直接対決に挑んだ。そしてここでも南野は、先制点を生み出すきっかけを作った攻め気あふれるプレーに続き、後半開始直後に2点目を自らネットにおさめ、2-0での勝利を引き寄せている。

 RC ランスもブレストも敵陣での対戦。しかもリーグ・アンでもっとも“プレーしにくい”と敬遠される相手の本拠地で発揮した強心臓。そうした攻撃での好パフォーマンスに加えて、守備面が脆弱だった今季のモナコにおいて、南野は守備でも大いに奔走した。

 サイドバックにも超攻撃的な選手を置くことの多いヒュッター監督のラインナップでは、南野とゴロビンが賄うエリアへの攻守両面での負担はかなり大きかったのだが、

「逆に僕とかゴロビンのところで奪って前を向ければ、相当チャンスになってそれが攻撃に繋がっている場面も多い。そのところで、自分を示していかないといけないなと思っている」と南野は意欲的だった。レンヌ戦で、ハーフライン付近からゴール前までピッチを激走し、どんぴしゃのスライディングで相手シュートを弾き出した超ファインプレーは、その心意気とともにメディアでも大喝采を浴びた。

 ヒュッター監督は最終節のあと、南野について、しみじみとした様子でこう話した。

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