「保持」と「非保持」の妥協点
ゴール前へのクロスや、裏抜けした選手へのボールの供給は、相手ゴールへの仕掛けに繋がり、仕掛けの結果は成功するか、失敗するかである。何を当たり前のことをと言うかもしれないが、ゴールを目指した結果、相手ボールになることは、ボールを保持するチームからすると一大事となる。ボールが相手に渡ってしまう可能性が高くなるからだ。
よって、僕たちのボールを返せ!と言わんばかりに、ハイプレッシングを仕掛けたり、ボールを失った瞬間にボールを奪い返すプレッシングを即実行したりすることで、自分たちがボールを保持する時間を増やす道を選ぶことが、ボール保持を基調とするチーム作りで大切なこととなっている。アルビレックス新潟もボールを保持する時間を増やすために、ボールを果敢に奪いに行くのだが、ここに脆さが存在していた。
前線の4枚がプレッシングに出ていくことが多いため、ボールを奪いきれないと、セントラルハーフコンビが縦横無尽にカバーリングに奔走することになってしまう。カンテとカンテなら2人でカバーリングを無理なく実行できるかもしれないが、アルビレックス新潟のセントラルハーフはどちらかといえばボールプレーヤーであり、カバーリングを嬉々として行うタイプではない。
横浜F・マリノスや川崎フロンターレが苦戦しているように、ハイラインのチームはどうしてもセンターバックがさらされる展開が試合の中で訪れてしまう。そのときにセンターバックやキーパーが理不尽なプレーができるかどうかは試されているが、チアゴ・マルティンスや高丘陽平を失った横浜F・マリノスは苦労が続き、怪我がちのジェジエウと海外に旅立った谷口の代わりを川崎フロンターレは見つけたようで見つけられていない。
ハイボールに強いトーマス・デンは守備の要として計算できるかもしれないが、さらされた状態で耐えきれるほどの守備力がアルビレックス新潟には残念ながらない。となれば、1秒でも早くボールを奪い切るのではなく、相手がボールを保持する時間を受け入れながら、最終ラインがさらされることなく、ボールを保持する場面では延々と持ち倒す道を選べるかどうかにかかっている。