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Jリーグ 6か月前

このスタイルで勝つには? アルビレックス新潟の問題となるビルドアップ“後”のフェーズ【戦術分析コラム】

シリーズ:戦術分析コラム text by らいかーると photo by Getty Images

決定機を作るためのデザイン。曖昧になりがちなのは…


 次にどの位置からどのようなクロスをあげるか。クロスをあげるときに気をつけることはキーパーに取られるようなボールを蹴らないことだ。一気にカウンターをくらう危険性が出てくることは、ロシアワールドカップの悲劇を思い出せば明確だろう。そのためにはボールの軌道とパスの受け手から出し手までの距離を考慮する必要がある。大外レーンからのクロスは、キーパーが前に出る時間を与えてしまうがちだ。クロスの質でどうにかできる問題でもあるが、できる限りそんな時間を相手のキーパーに与えてしまいたくない。

 となれば、欧州サッカーで流行りに流行りすぎてスタンダードになってしまったペナ角、もしくはハーフスペースからのクロスが理想的と言えるだろう。この位置でフリーになれなければ、相棒のハーフスペースへのランニングで新たな攻略ルートの開拓になる。できれば逆足でのクロスがボールの軌道的に理想だが、ワガママは言わない。でも、新潟の右サイドに左利きでペナ角からクロスをいれられる選手はほしい。

 最後に誰が合わせるか問題である。シュート、中への折り返しが得意な選手が理想的だろう。サイドハーフで谷口海斗、小見洋太のコンビが最近の試合で使われている理由はFW的な裏抜けとゴール前のフィニッシュが期待されているのかもしれない。もちろん、サイドバックの攻撃参加で、アビスパ福岡戦のように早川史哉がゴールを決める形でもよいだろう。撤退した相手へのクロス大会は新潟の恒例行事になりつつあるが、クロスのデザインがなされれば、もう少し決定機が増えるかもしれない。

 現状の新潟はライン間職人が多く、ゴール前でのランニングが少ない傾向にある。インサイドハーフの価値がポケットへのランニングの回数と言われる時代になっているように、ポケットからのクロスの価値とポケットへのランニングによるスペースメイクはもっと行うべきだろう。ただし、新潟の場合は密集によってそれぞれの選手の役割がぼやけていることもあって、誰が裏に走るのかが曖昧になりがちである。

 課題はあれど、光明もある。

(文:らいかーると)

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【了】

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