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【アーセナル分析コラム】強さの秘訣にアルテタではないもう1人の「天才」あり。セットプレーを進化させたその人物とは?

シリーズ:分析コラム text by 竹内快 photo by Getty Images

ジョバー氏のアイデア

ニコラス・ジョバー氏
【写真:Getty Images】



 ジョバー氏が「天才」たる所以、それはピッチ上に揃う選手たちに合わせた最適なアイデアを豊富に用意していることにある。

『The Athretic』によれば、シーズン後半戦からデクラン・ライスが左コーナーキッカーを務めるようになったことも、ジョバー氏の影響があるようだ。最大の特徴は、セットプレーでゴールを決める選手、すなわち「本命」の選手にボールが届くまでの道筋を、細部に至るまで完璧に作りこんでいることだろう。

 分かりやすい例を挙げると、アーセナルがフリーキックの時に味方選手たちをオフサイドポジションに配置するシーンを見てもらいたい。

 キッカーがボールを蹴ると同時に、オフサイドポジションに立っていた複数の選手がゴールとは反対方向に動くことで相手ディフェンダーの動きを妨害。GKの目の前に広大なスペースを作り、そこに「本命」の選手が走り込むことでゴールネットを揺らす仕組みとなっている。

 エバートンをエミレーツスタジアムに迎えたこの試合でも、そのアイデアの一部が垣間見られた。コーナーキックの際に上背のある選手をファーサイドに並べ、相手GKの付近にベン・ホワイトを配置。キッカーがボールを蹴る瞬間にファーサイドにいたカイ・ハフェルツがホワイトの近くまで走り込み、空いたスペースに「本命」のウィリアム・サリバ、ガブリエウ・マガリャインスなどがなだれ込んでゴールに迫っている。

 今回はGKジョーダン・ピックフォードの好プレーもあって、セットプレーからゴールは生まれなかった。しかし、複数の選手が囮になったり、あるいは相手DFの動きを封じる壁となることで、相手にとって危険な位置に危険な選手=本命の選手をスムーズに送り込むことに成功している。

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