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Jリーグ 6か月前

ヴィッセル神戸は「ここから」。酒井高徳らが引き上げるべき“基準”「長谷部さんや岡崎さんが敷いたレールを…」【コラム】

シリーズ:コラム text by 元川悦子 photo by Getty Images

「体力的にキツくなかったかと言ったら絶対に嘘になる」



 後半の入りも膠着状態が続き、吉田監督は64分に佐々木と広瀬陸斗を交代。広瀬を左サイドに置いて、武藤を右に動かした。「陸斗の起用に関しては、後半は自分たちの時間が長かったので、落ち着かせながら精度の高いクロスを期待した」と指揮官は説明。昨年の対戦でクロスから崩して大迫のゴールを生み出していたことを踏まえ、同じような形をイメージしたのだろう。

 これで攻撃が活性化すると思われたが、鹿島の堅牢な守備ブロックを崩しきれない。苛立ちが募る中、30代中心の神戸は徐々に体力が奪われ、運動量が落ちていく。対峙していた鈴木優磨も「相手も後半は疲れが来てて、スペースがすごく空いていた」と語っていたが、連戦による疲労はピークに達していたのだろう。

 そんな時、まさかのアクシデントが起きてしまう。発端は81分の鹿島のスローインだ。左サイドバック・安西幸輝が低い位置に落ちてきた鈴木優磨にボールを渡した瞬間、山口蛍と扇原貴宏のマークがやや中途半端になり、スルーパスを出されたのだ。

 マテウス・トゥーレルと山川哲史も後手を踏み、名古新太郎に背後に抜け出されてしまう。そして名古が放ったシュートをGK前川黛也がブロック。これが不運にも前にこぼれ、濃野公人に詰められた。神戸としては最悪の時間帯の失点で非常にダメージが大きかったに違いない。

「最後のところで集中力が切れたのがウチで、集中力を保ったのが鹿島かなという感じだった」と酒井も苦渋の表情を浮かべたが、この一撃が致命傷になり、神戸は得意なはずの鹿島に手痛い敗戦。FC町田ゼルビアに首位を明け渡し、2位に後退することになった。

「体力的にキツくなかったかと言ったら絶対に嘘になるし、それはどこのチームも一緒。特別な敗因だったとは思いません。サッカーはミスのスポーツだし、ああいうことは起こり得る。今日に関して言えば、自分たちのやりたいことをやれた時間帯もあれば、やれなかった時間帯もあった。最終的に鹿島の方が最後の集中力を高く持っていたことが勝敗を左右した。それが事実だと思います」と酒井は改めて語気を強めていた。

 長いシーズンを戦っていれば、こういう壁にぶつかることもある。キャプテン・山口も「優勝するチームは連敗しないことが大事」と口癖のように言っているが、悪い流れをいち早く断ち切り、前向きな方向にギアチェンジできるかどうかが重要だ。神戸のベテラン勢は数々の修羅場をくぐり抜けてここまで来ている。厳しい局面に立たされた今こそ、その経験値を生かすべきなのだ。

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