「町田と戦って収穫だったのは…」
【写真:Getty Images】
「相手のストロングポイントを自分たちも警戒していた中で、前に多く人数をかけていた分、仕方ないところはあると思う。ただ、自分自身もクロスに対してもう少しいい準備ができたのかなと。本当にたらればですけど、一瞬の判断のクオリティを上げないといけない。そこは僕の個人戦術になってくるので、もっと突き詰めていかないといけないと思います」
西尾は反省の弁を口にしたが、まさにその“一瞬の判断”の重要性をカタールでも痛感してきたばかり。手を払いのけただけで悪質なプレーと見なされる怖さ、わずかなスキが命取りになる厳しさを彼は学んで戻ってきた。そのうえで、今度はオ・セフンに決められたのだから、悔しさはひとしおだったはず。もちろん今回の失点は彼1人の責任ではないが、守備の要としてリスク管理、組織の再構築含め、やるべきことは少なくないはずだ。
その後、セレッソはレオ・セアラのPKで同点に追いついたが、後半ATにまたもクロスから失点してしまう。このシーンでは左サイドの高い位置を取っていた林幸多郎がクロスを上げた瞬間、エリキと荒木駿太がゴール前に侵入。西尾と鳥海晃司がそちらをケアしている間に大外からミッチェル・デュークに飛び込まれる形だった。
終盤のセレッソは決勝点を取りに行く意識が強く、前がかりになっていた分、後ろとの距離が空いて間延びしてしまった。終盤ピッチに立った清武弘嗣は「後ろの選手たちは疲れていたし、途中から出た選手たちが感じて配慮してあげないといけなかった。正直、1−1でもよかったのかもしれない。そのあたりのゲームコントロールはもっとできたし、チーム全体の課題だと思う」と悔やんだが、西尾ら最後尾の面々からもっと声を出し、全体を落ち着かせてもよかっただろう。
結局、試合は2−1で終了。セレッソは6戦未勝利・3連敗で8位まで順位を下げることになった。自らのチーム復帰戦を白星で飾れなかった西尾にしてみれば不完全燃焼感は強かったに違いないが、ここで下を向いているわけにはいかない。リーダーの1人として士気を高めていく必要があるのだ。
「町田と戦って収穫だったのは、いろんなタイプのFWと対峙できたこと。長身の選手、スピードある選手、体が強い選手と次から次へと違ったタイプが入ってくるんで、やりづらさはありましたけど、本当にいい経験になった。これを先につなげないといけない。決してネガティブになることなく、前を向いていくしかないと思っています」
ほろ苦いリスタートを切った西尾。DFというのは失点やミスから成長できる部分は少なくない。若き日の吉田麻也(LAギャラクシー)や板倉滉(ボルシア・メンヒェングラートバッハ)らもそうだった。ここ1か月の苦しみを糧にすることしか飛躍の道はないのだ。
(取材・文:元川悦子)