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「それが大きな失敗だった…」浦和レッズ、ジョアン・ミレッGKコーチの悔いと違和感。鈴木彩艶を例に考えるGKの評価基準

シリーズ:コラム text by 川原宏樹 photo by Getty Images

監督のコメントが世間の批判を助長することも…

鈴木彩艶
【写真:Getty Images】



 たとえば、1-2で敗れたアジアカップグループリーグ第2節イラク戦では、左からのクロスを鈴木彩艶がはじいたが、そのこぼれ球を頭で押し込まれて先制点を奪われた。ただ、この試合の被シュート数は9本でうち枠内は3本だった。3本中2本を決められたと考えると、失点率は高く批判の対象となるのも理解はできる。

 一方で、チームが放ったシュート数は15本あった。だが、枠内シュート数は2本にとどまり、得点は1点だった。シュート数は相手より6本も上回ったが、枠内シュート数は相手を下回っている。

 極論をいえば、この試合で攻撃陣は14点分のミスをしている。シュート数に対する得点率が100%にならないことを踏まえて、アジアカップ前データと比較すると15本のシュートを打っていれば6本以上は枠内に入っており、3点は決まっている確率になる。

 完全に攻守を切り分けて評価するのも暴論ではあるが、上述のデータを考慮すると責任の比重はどちらが高いかは明白で、ミレッの主張する違和感には道理がある。

 GKのミスは直接的に失点につながりやすい。それ故に感情論による批判が多いように感じられる。

「大半の人々がGK目線ではなくフィールドプレーヤー目線で試合を見ていて、次に彼らがどうプレーするかを期待しながら見ています」とミレッは分析する。決定機が生まれたときにはGKがどう守るかではなく、違うユニフォームの選手らが得点できるかできないかという基準で観戦する人がほとんどで、それがGKへの誤った評価につながっていると主張している。

 加えて、監督やコーチらスタッフ陣のコメントがGKへの批判を助長させてしまうことがあると説明。彼らにも理解してもらうことを試みてこなかったことを悔いている。

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