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Jリーグ 6か月前

名古屋グランパスの方向性は正しい。しかし…。ボール保持・非保持の制度設計から「粗」が浮かび上がる【戦術分析コラム】

シリーズ:戦術分析コラム text by らいかーると photo by Getty Images

名古屋グランパスが「フリーの選手を創る」ギミック

名古屋グランパスの長谷川健太監督
【写真:Getty Images】



 三國ケネディエブスは徐々にボールを運べるようになってきたが、名古屋がサンフレッチェ広島との試合でセンターバックの荒木隼人にボールを持たせて困らせたように、フリーのセンターバックがボールを運び、時間とスペースを創ることは言うは易く行うは難しなのである。だが、一方で名古屋のセンターバックの面々はフリーの選手を「見つける」ことは淡々と行うことができるのだ。

 フリーの選手を創る方法は大きく分けると、個人でマークを剥がす方法とチームで配置を動かす方法がある。名古屋の場合はこの両者をミックスして行い、フリーの選手を作り、センターバックの選手たちがボールを一気に届けることをメインとしている。

 つまり、フリーの選手がいればボール保持は機能し、フリーの選手がいなければセンターバックたちがフリーの選手を「創る」ことは難しい現状となっている。よって、ボールを奪いに来てくれればどうにかなるけれど、センターバックにボールを持たせてボールを離してからが勝負の守備戦術や、どんなときもマンマークでフリーの選手を作らせない根性戦術の前では、ボール保持が効果的でなくなってしまう傾向が強い。

 課題を解決するには、センターバックの成長を気長に待つか、できる選手を連れてくるか。もしくはどんなときもビルドアップの出口を準備できるような移動の組み合わせを見つけられるかだろう。ただし、実際にはボール保持の完成を待つよりは、相手にボールを押し付けたほうが結果への近道になるかもしれない。正当な抜け道としては、困ったときのロングボールのためのパトリックを常に起用したり、山岸祐也の復活を待ったりすることも手だが、セレッソ大阪戦で見せたようにハイボールの的として三國をあげてサイドで空中戦の優位を持ってくるほうが現実的かもしれない。

 また、フリーな選手を見つけていくとしても、どこかで行き止まりになることが常だ。問題は貯金した時間を誰に使わせるかを選ぶかだろう。対面の相手を質で凌駕できる選手、狭いエリアでも時間とスペースをつなげる選手、目が揃っている選手たちによるコンビネーションと、名古屋がどの組み合わせを選ぶかは興味深いところだ。

 個人的には前述した和泉、森島、内田がキーマンになっていきそうな予感を覚えている。移動の達人である彼らが相手陣地でもボールを持ちながら相手との駆け引きによって、周りに時間とスペースを配っていければ、多くの問題は解決していきそうではある。

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