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【アーセナル・分析コラム】前半リードで全勝の事実。接戦を確実にモノにできる理由とは?

シリーズ:分析コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

効率よくマンチェスター・ユナイテッドと対峙したアーセナル


 今節のマンチェスター・ユナイテッドはボランチのソフィアン・アムラバトが2人CBの間に降りるダウンスリーの形でビルドアップしていた。加えてGKのアンドレ・オナナも配球に優れた選手なため、アーセナルの[4-4-2]のプレスがハマりにくい状況にあった。

 前半の開始直後こそプレスをひっくり返されてピンチを迎えることもあったが、アーセナルは20分に相手のラインコントロールの連係ミスを突いて先制に成功する。これが決定打となって「基本的にはリトリートで守りつつ、数的優位のカウンターで攻めることができるタイミングは一気に相手ゴールに迫る」割り切った戦い方を選択することができるようになった。

 先述した通り、割り切って守ることを選択したアーセナルの守備は堅い。前半はマンチェスター・ユナイテッドに1本も枠内シュートを打たれず、68分のカゼミーロのミドルシュートが最初の枠内シュートとなった。

 ゴール前を固めていることからシュートコースが限定されており、シュートブロックも6つ記録。61分にアレハンドロ・ガルナチョへの対応で、ベン・ホワイトとブカヨ・サカの間でのマークの受け渡しのミスこそあったが、守備時の連係ミスもこの一つぐらいだろうか。試合終盤こそアーセナルの選手たちの疲労が目立ち、カウンター時の判断ミスやパスミスで逆にカウンターを受けることもあったが、守備は一貫して集中を保つことができていた。

 終わってみればほとんどマンチェスター・ユナイテッドにゴールを脅かされたシーンはなく、14本ものシュートを打たれながらゴール期待値はわずか0.75。明確にボックス内でシュートを打たれたのは1本のみで、ペナルティーエリアのライン近辺から3つ、あとの10本は全てボックス外からのものだった。

 逆にアーセナルはペナルティーエリア内だけで7本のシュートを放っており、効率よく攻めたアウェイチームがスコア以上の完勝を収めた。

 20年ぶりの優勝の行方は1試合消化が少ないマンチェスター・シティ次第ではあるが、今シーズンのアーセナルが強かったことは断言できる。そして現在が強さのピークであるようには思えず、ミケル・アルテタ監督の下で確実にチームとして成長を続けている。

 今シーズンの熾烈な優勝争いを経験したことで、若い選手たちのメンタル面での成長も見込まれる。彼らの未来が明るいことは間違いない。

(文:安洋一郎)

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