身体を変えずに技術を変えると、動きが鈍くなる
「海外のうまい選手はボールを真下に置いていますよね。1、2のリズムで、軸足を置いてポンと蹴るだけで、充分強くキックできます。歩く延長で蹴るようなイメージです。ところが、ヒザ人間は1、2、3で、一度溜める動作を入れなければ力を込められないので、真下にあるボールを蹴ろうと思ったら、一度後ろに振りかぶるか、もしくは前方にボールを突いてから踏み込まないと、蹴ることができないのです。
海外のうまい選手は、ボールを身体の真下に置くから、その形だけを真似する人はいるのですが、ヒザ人間がボールを真下に置くと、動きにくくなってしまう。身体は変えずに技術だけ変えると、そういうちぐはぐなことが、日本のスポーツ界ではよく起きていますね」
また、サッカーで理想的と言われる2軸動作(左右の軸を切り替えながら重心をスムーズに移す動作)も、骨盤から動く人は自然にできるそうだ。ヒザ人間は四肢に頼って動いているので、軸が固定され、1軸になりがち。ところが、骨盤から動く人は、そもそも骨盤という軸を移しながら運動しているので、自然と2軸動作がベースになるそうだ。
「たとえば、これはうちに来ているGKの選手がよく言うのですが、相手がターンしながらトラップして、シュートを打ってくる場面があります。1軸の相手はボールを止めた後、振り向いてワンテンポ空いてからシュートを打ってきます。ところが、2軸の人はボールを止めた足に体重を移しながら止めるので、振り向いた瞬間にシュートが飛んできます。日本ではなかなか、このタイミングでシュートが飛んでくることがないので、最初は戸惑ったそうです」
こうした場面は試合で見たこと、経験したことをイメージするとわかりやすいだろう。身体の動かし方の違いは、シュートだけでなく、もちろんドリブルにも影響がある。