「あのようなビッグプレーを…」
「あれが間に合うんだ、と。途中でいなくなってしまった彼の、スピードという強みがまさに出た場面だったというか、僕自身、あのようなビッグプレーを見た経験がなかなかない。本当に助けられました」
試合の流れを一気に川崎Fへ傾かせた場面をさかのぼると、札幌陣内の左サイドでゆっくりとボールを持ち上がり、間髪入れずに右足を振り抜いた左ウイングバックの青木亮太のプレーに行き着く。
一気呵成のロングフィードが川崎Fのホーム、Uvanceとどろきスタジアムのピッチ上を切り裂いていく。ターゲットは逆サイド、それも大外にいた右ウイングバックの近藤。川崎Fの左サイドバック、佐々木旭の背後を、オフサイドぎりぎりのタイミングで突いた23歳がどんどん加速していった。
走りながら右足を軽くタッチさせた近藤は、ボールの勢いを殺さず、そのまま右角付近からペナルティーエリア内へ侵入していった。佐々木もまったく追いつけない。今シーズンに横浜FCから完全移籍で加入した、パリ五輪世代でもある23歳のアタッカーの眼前にはもう上福元しかいなかった。
すかさず上福元も前へ出る。距離が3mほどまで縮まった瞬間に、近藤はある決断を下した。ワンバウンドしたボールの落ち際に、右足を優しくヒットさせたループシュートを近藤はこう振り返った。
「判断としては間違っていなかった、と思っています。それでも…」
反応できなかった上福元は慌てて振り返り、必死にボールを追おうとするも体勢を崩してしまった。それでも近藤が懸念を抱いたのは、自身の左側を追い抜いていく大南の姿を察知したからだ。
「ボールに加える力が足りなかったとういか、(ゴールキーパーの)頭を越すことだけを意識しすぎて、少し緩いシュートになってしまった」
自らのシュートにスピードが足りない、と感じた近藤はさらにこんな言葉を紡いでいる。