ヒザ人間はワンテンポ遅い。「冗談抜きで、瞬間移動されている」
「高重心で仙腸関節から動く選手は、動作がワンテンポ少なくなります。中から力が動き始めるので、キックで言えば、1、2で蹴ることができる。でもヒザ人間の場合は、地面の反力を受けないと身体がついて来ないので、1、2、3で蹴ります。つまり、ヒザ人間は1回溜めてからでなければ、動けないんですよ。
このワンテンポの違いは、僕がアメフトで感じたアフリカ系の選手に競り負ける現象と同じです。彼らは『ドン!』で動きますが、アジア系の選手は地面を踏んで1回溜めてから動くので、当たろうと準備した瞬間に、もう当てられている。このタイミングの遅れで、競り負けるのです。冗談抜きで、相手に瞬間移動されている感覚でした。
そうやって1度も身体が沈むことなく、『ドン!』で動くことを、僕らは『ゼロモーション』と呼んでいます」
予備動作が無くなるゼロモーションは、コンタクトやキックのタイミングなどフィールドプレーヤーだけでなく、GKにとっても重要だ。ヒザ人間は大きなプレジャンプで予備動作をして、地面の反力をしっかり得なければ遠くへ跳べないので、動きがもっさりして見える。しかし、骨盤から動くゼロモーションのGKは、地面を強く踏まなくても早く、より遠くへ跳べるので、セービングの動きが軽く、スムーズに見える。
上半身にも同じようなことが言える。GKはダイビングするときに腕をいっぱいに伸ばしてボールに触ろうとするが、骨盤から動ける選手は、仙腸関節から動きが始まって肩甲骨が広がり、腕がより遠くへ到達する。ところが、骨盤から動けない選手は、ヒジを伸ばすだけになってしまい、遠くに届かず、また手に伝わる力も弱いのでボールの勢いに負けてしまう。