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Jリーグ 7か月前

家長昭博はどこに…。川崎フロンターレが悩まされる難解なパズル。配置と個性の狭間で揺れるチーム設計【戦術分析コラム】

シリーズ:戦術分析コラム text by らいかーると photo by Getty Images

試合ごとに微調整を要する鬼木達監督の苦悩

川崎フロンターレを率いる鬼木達監督
【写真:Getty Images】



 ボール保持は[4-3-3]でボール非保持は[4-4-2]くらいの移動によるコストはたいしたことないが、ウイングが内側に移動して、サイドバックが大外レーンに移動するコストはそれなりに大きい。家長のいなくなった右サイド問題は今後も残り続けるだろう。かつてRBライプツィヒは中央攻撃で世界を騒がせていたが、サイドからの攻撃、つまり、大外レーンの活用もそれなりに行っていた。ライプツィヒの肝は逆サイドの選手がペナ幅まで絞ってプレーすることであった。サイド攻撃は行うけど、ピッチを広く使うのではなく、逆サイドは空白であることを許容していることがわかる。

 5レーンに5人を配置するメリットは、相手の最終ラインに対する圧力と自分たちのポジションバランスの維持にある。一方でどこかのレーンが空白でも、相手はそのレーンを捨てることは簡単にはできない。レーンを捨てて他のレーンのカバーリングに奔走すれば、そのレーンに誰かが侵入してきたときに守る選手がいるかどうかはわからないからだ。選手はいないんだけど、持ち場を離れるわけにはいかない戦術的行為の代表がゼロトップだろう。無理くりに誰かを配置するよりは、いっそのこと誰も配置しないことも選択肢のひとつにすることがパズルを解く手になるかもしれない。

 相手の対策を考慮しつつも、自分たちの役割と個性の整理で毎試合ごとに微調整が入る鬼木監督の苦悩はいかほどだろうか。端から見ていると、絶対的な選手、この場合は立ち位置と役割がどんな組み合わせでも変わらない選手が見当たらないことにチーム作りの困難と向き合っていることを感じさせられる。

 フリーマン適正のある家長と脇坂による個性の最大化を図るか、マルシーニョとエリソンの質を発揮できるようにチームを作り変えるか、立ち位置を守れる選手たちを中心にバランスの維持を優先したアタックに踏み切るか、それとも、できないことをできるように淡々とトレーニングを積み重ねることで進化を狙うか。もちろん、それぞれが別個で存在するわけではなく共存共栄することも可能だろう。その舵取りは非常に困難であるが、家長をトップ、ブラジルコンビをウイングに起用したように、どんな策も選択肢になってきたことから、方向性の定めの日は近いかもしれない。

(文:らいかーると)

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【了】

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