フットボールチャンネル

Jリーグ 7か月前

中島翔哉が浦和レッズを変えつつある。「できる選手なんですよ」。“10番”だからこそ任される特別なタスクとは【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

「相手選手との駆け引きが好きなので」

浦和レッズ
【写真:Getty Images】



「誰とやってもいい連係ができる選手がたくさんいるので、本当にみんなのおかげだと思っています。練習でもやっていますけど、練習と試合とはまたちょっと違うというか、試合に出た方がやはり連係面とかもよくなっていくので、もっとたくさん学んで、少しでも成長していきたい」

 公式戦に先発で絡み始めてからの変化を振り返った中島は、ともに1994年に生まれ、東京ヴェルディのアカデミーで10歳から切磋琢磨し、高校3年生だった2012シーズンに2種登録選手としてJ2リーグでデビューした前田直輝と再び巡り会い、浦和の両ウイングを形成している今シーズンをこう語る。

「直輝とは(ヴェルディで)ずっと一緒にやっていたので、相手ゴールの近くになれば絡んでいくケースが多くなるだろうし、そのときにはもっともっと相手が嫌がる動きができればと思っています」

 試合は後半アディショナルタイムに名古屋がMF和泉竜司のゴールで一矢を報いたものの、浦和が2-1で逃げ切って連敗を2で止めた。試合終了間際には名古屋陣内の左コーナーフラッグ付近でボールキープを繰り返し、時計を進めたプレーを途中出場のFW興梠慎三は申し訳なさそうに振り返る。

「ホームの試合でああいう角でキープというのはあまりしたくなかったけど、これがいまのチームの現状。仕方ないと思いながら、勝ち出すとチーム的にも個人的にも勢いづくと信じています」

 それでも興梠を援護する形でボールキープに加わった中島が、複数の相手選手に囲まれながら、足裏を駆使したボールタッチを含めた神業的なテクニックや興梠との息の合った連係を次々と披露。本来ならば退屈に映りかねない場面を、スタンドやネット上を騒然とさせた劇場へと一変させた。

「相手選手との駆け引きが好きなので、そういう感じでやっています」

 テクニックの高さも見せつけた攻防を淡々と振り返った中島は、開幕3連敗後の6試合で5勝1分と無敗をキープするなど、調子を上げてきた名古屋を撃破した白星を笑顔で歓迎している。

「勝ちながらいろいろと成長できる、というのはすごく大事だと思っています」

 新指揮官が描く戦術通りにプレーしなければ、という思いが歯車を少し狂わせてきた感のある今シーズンの浦和で、いい意味での自由を与えられた「10番」がポジティブな変化をもたらしつつある。復活を遂げようとしている中島はその脳裏に、敵地Uvanceとどろきスタジアムに乗り込む5月3日の川崎フロンターレとの次節で、今シーズン初の連勝をマークする浦和の姿を思い浮かべている。

(取材・文:藤江直人)

1 2 3 4 5

KANZENからのお知らせ

scroll top
error: Content is protected !!