日本は計算されたチーム
55分にはファディルのヘディングシュート。GK小久保玲央ブライアンの守備範囲に飛んでくれたので助かった。
U-23イラク代表は60分の交代から4-4-2にシステムを変更。攻勢をかけてくるが、U-23日本代表もカウンターからチャンスを作る。平河の突破からの折り返しを細谷がヘディングで狙ったがポストに当たる。
29分、U-23イラク代表に最大のチャンス。ロングパスで抜け出したワティネのプルバックを交代出場のクルーリがシュートしたが高井が辛くもブロックした。難をしのいでからは藤田のゲームコントロールと荒木の展開力で隙のない試合運びを見せ、そのまま2-0で終わらせた。
U-23日本代表はこの大会を勝ち抜くのに適したチームだった。
編成方針はA代表と似ていて、ハードワークできない選手がいない。個人的なミス以外に守備に綻びが生じにくかった。突出した存在がないかわりに、高いレベルの集団で誰がプレーしても水準を維持できるし、戦術も変えなくていい。これは過密日程を戦ううえでは大きなアドバンテージになった。
攻撃はやや単調だったが、山田と山本理仁の速くて正確なキックがあるので、セットプレーで得点できる。流れの中でもクロスボールからセットプレーに似た形で攻められる。平河の突破力も強力な武器だった。アタッキングサードでの荒木のテクニック、藤尾翔太の引きずるように侵入していく右サイドのドリブル、松木のミドルやスペースへの飛び出しなどもあり、細谷のゴール前での動きとシュート力も発揮されていた。
いずれも個人技とその組み合わせだが、短期間でほぼ2チームを用意しなければならない状況を考えれば十分な手数だろう。全体にこの大会を勝ち抜くためによく計算されたチームであり、さほど危なげなく決勝へ進むことができた。
(文:西部謙司)