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Jリーグ 7か月前

「満足してんじゃねえぞと…」名古屋グランパス、稲垣祥に訪れた苦境。「自覚している」2失点関与に何を思ったのか【コラム】

シリーズ:コラム text by 元川悦子 photo by Getty Images

「ボランチがどういう働きをするかで…」

名古屋グランパスのMF稲垣祥
【写真:Getty Images】



 実際、プロ10年間のキャリアも順風満帆というわけではなかった。2014〜2016年の甲府時代は主軸の1人として試合に出ていたが、ポジションは本職のボランチではなくシャドーがメインだった。2017年にはサンフレッチェ広島にステップアップするも、青山敏弘や吉野恭平らボランチ陣の選手層、アンカーシステムを採用した戦い方もあって、1年目はコンスタントな活躍が叶わなかった。

 2020年の名古屋移籍後は一気に存在感を高め、日本代表にも上り詰めたが、チームのJ1制覇は叶っていない。稲垣自身も「いい選手だが、何かが足りない」という印象が拭えないところがあった。向上心の強い男だからこそ、J1・300試合目の浦和戦で「自分はもっともっとやれるはず」と新たな野心を抱いたに違いない。今回の手痛い2つのミスを今後の飛躍の契機にできるのであれば、彼にとっても、チームにとってもポジティブだろう。

 結局、名古屋は和泉が終盤にリスタートから1点を返したが、1−2で敗戦。7戦無敗とはならず、順位も6位に後退してしまった。節目の試合でチームを勝利に導けなかった中盤のリーダーは深く反省しつつも、ここから再浮上へとけん引することを誓っていた。

「自分たちボランチが攻守に重要なのは分かっていますし、ボランチがどういう働きをするかでゲーム内容も変わってくるなっていうのも自覚してるんで、そこは責任感じながら、しっかりやっていきたいなとは思います。チームもまだまだ満足できない。もっと上に行きたいですからね。ただ、6試合負けてなかった中で1敗して、どう踏ん張れるかが肝心。次にどういう戦いができるかが大事だと思うんで、しっかり結果こだわってやっていきたいです」

 稲垣が語気を強めるように、今後の名古屋はヴィッセル神戸、広島と上位対決が続く。5月はルヴァン含めて7試合もある。ここをどう乗り切るかで今季の方向性が決まると言っても過言ではない。それだけに、彼自身も気合を入れ直す必要がある。

 節目の一戦で突きつけられた現実を直視し、勇敢に前へ突き進むこと。稲垣ならそれができるはずだ。

(取材・文:元川悦子)

▽著者:元川悦子
1967年、長野県生まれ。94年からサッカー取材に携わり、ワールドカップは94年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6回連続で現地に赴いた。「足で稼ぐ取材」がモットーで、日本代表は練習からコンスタントに追っている。著書に『U-22』(小学館)、『黄金世代』(スキージャーナル)、「いじらない育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(NHK出版)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)などがある。

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