僅差勝ちできる材料とは
【写真:2024 Asian Football Confederation(AFC)】
藤尾がクロスボールからの決定機を2つ決め損ねた後、佐藤恵允に代わって平河悠を投入。さらにアディショナルタイムに山田を荒木遼太郎へ交代。この交代策で攻撃の的が絞れて来る。
荒木は先発の山田と違って右サイドには張らない。中央でいつものトップ下としてプレーした。右サイドはSB関根が高い位置をとる。左は平河がキレのあるドリブルで脅威を与える。左右からクロスボールが入りやすくなり、中央の人数も増えた。
勝ち越しの3点目は延長11分だった。藤田から荒木の足下へ縦パスが入り、2人のDFの間にポジションをとっていた細谷へ、荒木から間髪入れずパスが通る。細谷はワンタッチで抜け出してGKの足の間を抜くシュートを決めた。
すでに疲労困憊だったU-23カタール代表に守備に追われながら攻撃に転じる余力はなく、延長後半から細谷に代わっていた内野航太郎がダメ押しの4点目をゲット。これもCKからで、クリアボールを川﨑颯太がシュートし、DFに当たってこぼれたところを内野航がすかさず押し込んだものだった。
4ゴールのうち2つはCKから。接戦を制するための決め手となりがちなセットプレーは今回のチームの武器だ。山田、山本理仁と精度の高いスピードボールを蹴れる左利きが2人いるのは強みである。
あと1勝でパリ五輪行きが決まる。10人の相手に一時は逆転を許し、思わぬ接戦になってしまったのは反省点だが、もともと接戦体質ではあると思う。その中で選手が代わっても崩れない組織、落ちない強度、そして計算できる得点源のセットプレーと、過密日程下の接戦を制するための準備ができている。接戦なので確実に勝てるとはかぎらないが、僅差勝ちできる材料が揃っているのは長所である。
(文:西部謙司)