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アジア 7か月前

「本物のレベルに…」横浜F・マリノス、ポープ・ウィリアムにとって特別な120分。脳裏に浮かんだ「自分の軌跡」【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

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AFCチャンピオンズリーグ(ACL)準決勝セカンドレグ、横浜F・マリノス対蔚山現代が24日に行われ、PK戦の末、マリノスが勝利。クラブ史上初の決勝進出を果たすことになった。1人退場者を出しながら耐え抜き、なんとか勝利をもぎ取ったチームの中で、守護神として足に限界を迎えながら最後までピッチに立っていたポープ・ウィリアムは何を思っていたのか。(取材・文:藤江直人)


横浜F・マリノスの歴史が変わった

横浜F・マリノス
【写真:Getty Images】

 歴史が変わる瞬間を、横浜F・マリノスの守護神、ポープ・ウィリアムは見ていなかった。いや、見ていられなかった。天国と地獄とを分け隔てる運命のPK戦。後蹴りのマリノスの5番手キッカー、DFエドゥアルドが助走に入る直前で、ポープは両手で自らの視界を遮ってしまった。

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 両足が限界に近づいていた状況が、まるで神頼みのようなポーズをポープに取られたのだろうか。それでも、エドゥアルドが蹴り終わるまで貫かれた沈黙から一変した、耳をつんざくような大歓声がマリノスのクラブ史上初のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝進出決定を教えてくれた。

 次の瞬間、つりかけていた両足を忘れたかのように、ポープはマリノスのサポーターで埋め尽くされたゴール裏のスタンドへ向かって、エドゥアルドよりも先に疾走していった。

「本当に苦しい展開のなかで、ファン・サポーターの方々も選手を後押ししようと声を切らさず、ずっと応援し続けてくれていたのは僕自身、ピッチに立ちながら感じていました。疲れ果てているフィールドプレイヤーにとっても、ものすごく心強いサポートだったんじゃないかなと思ったので」

 韓国Kリーグ1を連覇中の強豪、蔚山現代をホームの横浜国際総合競技場に迎えた24日の準決勝セカンドレグ。2戦合計スコアが3-3のまま、延長戦を含めて120分間に及ぶ死闘の末に突入したPK戦で、エドゥアルドが決めればマリノスが勝利する状況を手繰り寄せたのはポープだった。

 両チームの4人ずつがすべて成功させて迎えた5人目。J1のサガン鳥栖でも活躍したMFキム・ミヌの一撃を左へ飛んで完璧にセーブ。何度も雄叫びをあげ、そしてガッツポーズを作った。

「本当に(相手が蹴る)ギリギリまで我慢して、あとは自分が決めた方向へ飛ぶだけでした。意外にシンプルというか、駆け引きというよりも、自分を信じてやるだけでした」

 直前の4人目では、サポーターの歓声がため息に変わっていた。MFイ・チョンヨンが放った真ん中への強烈な一撃を、まるで予測していたかのように微動だにせず反応した。しかし、球威が勝っていたからか。両手を弾いたボールはゴールに吸い込まれ、ポープはその場に突っ伏してしまった。

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