新井章太が常に心がけていたプレーは?
「あれは前半の(仙頭の)ミドルシュートに比べたら、一瞬ですけどボールもある程度見えたので、本当に自信を持って、練習で準備していた通りにしっかりと弾けたと思っています」
むしろ事故が起こりかけたのは、1-2と追い上げられた後の後半アディショナルタイム98分だった。それまでアタッキングサードに入ったときにだけロングスローを放っていた町田が、林が敵陣に少し入ったあたりから、なりふり構わぬ形で神戸のゴール前にロングスローを放り込んできた。
しかも、途中投入されていた身長192cmのDF望月ヘンリー海輝が空中戦を制し、ひとつ飛び抜けた頭でさらにボールを前へすらす。パワープレーで前線に上がっていたDFチャン・ミンギュが飛び込むも、それまでポジションを保っていた新井が満を持して飛び出し、その眼前でキャッチした。
そのまま倒れ込んだ新井の背中を、ナイスプレーと感謝の思いを込めて酒井がポンと叩いた。結局、この12本目が最後のロングスローになった。13本目を獲得した直後の100分。神戸の勝利を告げる笛を中村太主審が鳴り響かせ、左タッチライン際でスタンバイしていた林が悔しそうにボールを叩きつけた。2敗目を喫した瞬間、第4節から首位をキープしてきた町田の陥落が決まった。
「ディフェンスラインが本当に粘り強く、最後までボールを見ながら、しっかりとはね返す対応をしてくれた。キーパーとしてボールが裏に抜けてくる状況への準備だけは常に心がけていましたけど、後ろにそらすようなケースもほとんどなかった。本当にディフェンスラインの選手たちに感謝したいですね」
町田のもうひとつの十八番、ロングボールへの対応を含めて仲間たちをこう称えた新井は、森保ジャパンに名を連ねる守護神、前川黛也が一発退場した横浜F・マリノスとの前節の79分から神戸での初出場を果たしていた。しかし、直後の83分に勝ち越しゴールを喫してチームも1-2で敗れた。
前川が出場停止となる町田戦へ。自分の他にオビ・パウエル・オビンナ、高山汐生がトップチーム登録されているゴールキーパー陣のなかで、いつもと変わらない日々を過ごせたと新井は振り返る。