FC町田ゼルビアのロングスローは「事故を狙っているだけ」
【写真:Getty Images】
キックオフ前の時点で首位に立つ町田の十八番にいきなりさらされた。開始4分までに右から2本、左から1本と計3度もロングスローを放り込まれた。最初にDF鈴木準弥が投じた3分の場面こそ、前へ出ながら両手でボールをパンチングした新井は、その後はポジションを移すのを自重している。
クロスなどに代表されるキックに比べて、手で投げるロングスローはスピードが大きく劣る。ボールが描く軌道も山なりで、重力との関係もあって、ゴール付近でどうしても失速して落ちる。
「前日の練習からしっかり対策をしていました。ボールが落ちる分だけキーパーが前へ出るリスクというものも増えてくるので、その判断を本当にはっきりしようと。前半はチャレンジしましたけど、そこは自分がいままで積み重ねてきた経験をもとにした判断のなかでプレーしました」
2本目以降は味方のフィールドプレイヤーに、ロングスローの処理を任せた理由を語った新井は、開幕からさまざまな意味で注目を集めていた町田の武器のひとつを次のように看破している。
「相手は事故を狙っているだけなので、あまり自分が引き出されないというか、ゴールを空けない、というプレーを心がけて、あとはとにかくゴールを守るという姿勢で常に準備していました」
例えば先制した直後の前半アディショナルタイム48分。右サイドから鈴木が放った6本目のロングスローのこぼれ球に対して、ペナルティーエリアの外でボランチの仙頭啓矢が強烈なブレ球のボレーシュートを見舞った。味方のブラインドとなり、反応がわずかに遅れた新井だったが、それでもゴール中央にしっかりとポジションを取っていた体勢から両手で弾き返してピンチを未然に防いでいる。
87分に右サイドからDF林幸多郎が投じた8本目のロングスローでも、同じくペナルティーエリアの外からFW荒木駿太に右足ボレーを放たれた。しかもゴール正面ではなく、左隅へコントロールされた一撃。あわや同点の大ピンチも、横っ飛びした新井のビッグセーブに救われた。
もっとも、新井によれば必然に近いと言っていいプレーだった。