「あれで対応を変えた」データが裏付けるパフォーマンスの向上

「（藤本は）結構強いんだなって。あれで少し対応を変えた。僕は小さいので上半身が崩れて倒されてしまったんですけど、逆にあれで目覚めたし、腰からしっかり行けば大丈夫だなと」

　川崎にとって難しいゲームになった。首位を走る町田は、これまでの試合と同じように相手の良さを消してきた。川崎は間延びし、中盤を経由したパスワークも寸断された。町田の狙いは家長昭博が空けたポジションを起点に川崎の右サイドを突くことだった。決勝点となるゴールはそのサイドで町田が数的優位を作り、瀬川の背後を取った藤本一輝のクロスを藤尾翔太が押し込んだ形だった。

　チームとして川崎の右サイドが狙われていたが、瀬川としては自信を深める試合になった。実際、1対1で苦戦する場面はほとんどないどころか、データ上では対面する藤本や林幸多郎の方が劣勢だった。立ち上がりのシーンではファウルすれすれのところで藤本に倒されて突破されるシーンもあったが、その後はほとんど自由を与えなかった。

「今日が一番余裕を持って対応できたかなと。今まではどうしようと思いながらやっていたんですけど、今日はしっかり自分の間合いでやれた。1対1や球際のところでやられる感覚はなかった。チームとしての裏の対応だったり、セットプレーのところ（が課題）かな」

　実際、FC東京戦では地上戦のデュエルは2戦0勝だったが、マリノス戦は9戦5勝、町田戦では6戦5勝と各段に向上している。町田戦では逆サイドからのクロスをクリアしてピンチを脱したシーンもあり、FC東京戦後に「試合を重ねながら要求してやれればいい」と言っていたアタッキングサードでの関わりも増えた。クオリティは着実に良くなっていると言えるだろう。

　ただ、経験のあるウイングバックとサイドバックは「全然違う」と言い切る。「1対1で奪うとか、クロス対応はめちゃくちゃ難しい。今までは自分の身体能力に頼って守っていた部分があるので、ボールホルダーに対しての駆け引きも、うまく守るように頭（思考）が変わってきている」。