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「そんな指示はオシム監督だけでした」ドリブラーの能力を最大化する味方の演出方法【特集:松井大輔のドリブル分析】

シリーズ:松井大輔のドリブル分析 text by 松井大輔 photo by Getty Images

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世界最高峰のプレミアリーグでも活躍する三笘薫のドリブルには、守備者の習性を利用する確かなロジックが存在するという。三笘と同じようにドリブルを武器に活躍した松井大輔氏は、自身の経験と理論に重ねながら、ドリブラーの特徴が活きるための条件を解き明かす。(分析:松井大輔、構成:川原宏樹)


DFの習性を利用したファーストタッチの意図

ブライトンに所属する三笘薫
【写真:Getty Images】

 前回は三笘薫が仕掛けるときには立ち位置や距離を重要視していることを明かしましたが、それだけではあれほど相手を抜けません。その他にも自身の体の向きや動かし方、抜け出す方向や角度、ボールの位置や運び方など細部に渡るまで綿密な工夫があります。

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 ほんの一部になりますが、シェフィールド・ユナイテッド戦から解説します。先に、相手との立ち位置を解説したシーンと同シーン(3:00〜)になります。自分が勝てる位置まで相手の誘導に成功した三笘は、右インサイドで切り返します。そのときにボールを縦方向のスペースへ大きく蹴り出していないことに注目してください。それにはしっかりとした論理的な理由が存在します。

 通常であれば、右インサイドで蹴り出すと同時にスピードアップして抜け出しを試みることでしょう。しかし、三笘は切り返した最初のタッチでは大きく運び出さず、ボールを体の正中となる位置にとどめる程度にしています。そして、直後のタッチで大きく蹴り出す二段式ロケットのようにボールを運び出しています。

 三笘は最初のタッチでは、まだ縦方向への抜け出しを最終決断していません。ある程度は抜け出せると考えているかもしれませんが、そのタッチ直後の相手の動きを見てから最終決断をしているように見えます。

 このシーンでは、キックフェイントにもなっている切り返しのタッチと同時に、相手は大きく右に釣り出されていますが、これほど釣られない状況は多々あります。それでも三笘の初速があれば抜け出せることがほとんどでしょうが、切り返しのタッチを大きくして自身の体からボールを離すと相手は体を投げ出して止めにくるでしょう。しかし、すぐにタッチできる足元にボールがあると、相手は飛び込めず足を止めることしかできなくなってしまうのです。そうして相手がフリーズしてしまえば、ボールには触れませんし、体をぶつけることもできません。

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