なぜ遠藤がフィルターとして機能しなかったのか
遠藤自身もあっさりとメイヌーやブルーノ・フェルナンデスに個人技でかわされるシーンもあったが、どちらかと言えば責任はチームとしての守備にあるだろう。
遠藤が活躍した試合は、いずれも彼が前向きに守備することができている。すなわち、前線からの連動したプレスがハマり、日本代表MFの守備範囲を限定させることで、そこにアジャストしてボールを奪えていた。
一方で、今節マンチェスター・ユナイテッド戦はチームとして前線からのプレスがいつもと比べると消極的だった。要所では高い強度を誇る場面もあったが、鬼気迫るようなリバプールが理不尽さを発揮する試合と比較をすると緩かったのは事実だろう。そのため遠藤が高い位置でボールを奪い、そのまま攻撃の起点となったシーンはかなり少なかった。
保持の局面でも効果的な縦パスやフィードを送ったシーンもあったが、パス成功率は先発出場したプレミアリーグの試合ではワーストの79%に留まっている。
これらのデータやチームの状況を見れば、この試合で遠藤が絶対的に機能していたとは言い難い。本人としても累積警告を気にしていたのかタックルに飛び込まない場面もあり、存在感は過去の試合と比較すると希薄だった。
ただ、繰り返すが今節のパフォーマンスは彼に責任があるわけではない。ミッドウィークに行われるアタランタとのUEFAヨーロッパリーグ(EL)準々決勝で再び印象的なパフォーマンスを披露する可能性も十二分にあるだろう。
リバプールは今節引き分けに終わったことで首位をアーセナルに譲り、プレミアリーグでの自力優勝の可能性がなくなった。ただ、シーズン終了までは約2ヶ月ある。日本代表MFにはチームとともに、最後まで走り抜けてもらいたい。
(文:安洋一郎)