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三笘薫は「プレ動作」が違う。「勝てる立ち位置まで相手を誘導する」ボールの触り方【特集:松井大輔のドリブル分析】

シリーズ:松井大輔のドリブル分析 text by 松井大輔 photo by Getty Images

三笘薫は「プレ動作」が他の選手と違う



 三笘の身体的特長のひとつにアジリティが挙げられます。初速が速いので、短い距離であれば大半の選手より先に行くことができます。極端にいうと、横に並んでしまえば相手を抜き去れる力を持っていますし、足を止めた状態から競っても勝てるのです。普通は足が止まった状態から抜き去るのは難しいので、相手との距離を詰めるまでにスピードに乗ろうとします。しかし、三笘が仕掛けるときはそのようなプレ動作を必要としません。それを十分に理解している三笘が仕掛けるときは、相手との立ち位置を重要視しています。

 三笘は相手との立ち位置がこうなれば縦方向へ抜け出せるという自信を持っており、細かくいうと距離感、角度、相手の体の向きなどから判断しています。先に、仕掛けるプレ動作として普通は相手との距離を詰めると同時にスピードに乗ると説明しましたが、あえて三笘のプレ動作を挙げるとすると、相手の立ち位置を誘導することになります。自分が勝てると考えられる立ち位置まで相手を誘導するために、ボールを動かしながら相手も動かすのです。

 2月18日に行われたプレミアリーグ第25節シェフィールド・ユナイテッド戦でも、そのロジックがわかるシーンがありました。(3:00〜)左サイドでボールを受けて、1対2の状況になります。三笘はサイドステップを繰り返しながらゴールライン方向へ移動。右のアウトサイドでボールを少し大きく動かすと、相手の1人が大きく右に釣り出されました。そこが誘導したかった相手の立ち位置になります。誘導できたことを確認した三笘は素早く右インサイドで切り返し、ゴールライン際へと抜け出したのです。

 この立ち位置は対峙する相手によって微調整されます。なかには、三笘と同等のアジリティを持つDFもいます。だから、試合中に相手との速度差を測るようなプレーを見せることもあります。試合序盤に縦方向へ抜け出してみて、相手が追いつき再び切り返すといったシーンです。そういったプレーで相手を測っているのです。追いついてきた相手であれば、次に仕掛けるときには立ち位置を修正して仕掛けることでしょう。

 もうひとつのポイントは、距離になります。初速が速い三笘とはいえ、相手との差が生じるまでにはある程度の距離を有します。

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