「習性を利用して…」クロスを上げる瞬間の技術
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右サイドでボールを受けた伊東は、ゆっくりとした速度で相手との距離を詰めていきます。2〜3割といった速度でゴール前の状況を確認しながら、アタッキングサードへと進入します。ゴール前の状況が整ったことを確認すると、縦方向へ蹴り出してスピードアップ。相手をかわして蹴った低い弾道のクロスがアシストになりました。
このときの伊東は相手を抜ききっていません。ボールを受けると同時にスピードを上げて、1対1の勝負を仕掛けることも可能だったように見えます。しかし、ここでは味方がゴール前まで行ける時間をつくることも考えたのでしょう。ゆっくりとボールを運び、その時間をつくっています。そして、ゴール前で有利な状況ができると同時に仕掛けて、クロスを入れています。
このプレーの最大のポイントは、クロスを蹴るひとつ前のボールタッチになります。伊東はボールが自分の体から離れすぎず、蹴りやすいポイントへとボールを動かしています。伊東のスピードを考えれば、もっと強く蹴り出してゴールライン際まで運んで相手をかわすことも可能かもしれません。しかし、体からボールが離れることによって、相手は足を出してきます。仮にゴールライン際まで運んだ場合、相手は体を投げ出してブロックに来たのではないでしょうか。
それよりも確実にゴール前へクロスを送るための選択として、相手が足を出しにくいように自分の体からボールを離さずに、すぐにタッチできる位置へ運んだと考えられます。すぐにタッチできる位置にボールがあると、対峙した相手は簡単に足を出すことができません。その習性を利用してクロスを入れられる隙をつくっています。また、さらに相手の足が届きにくいように少し外側へ運んでいます。