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30歳だった2015年4月にサッカー部監督に就任した前田高孝監督の下、「Be Pirates」というスローガンを掲げた近江高校は今冬の第102回全国高校サッカー選手権大会で決勝に進出するという大躍進を見せた。全国の視聴者を魅了したサッカーはいかにして生まれたのか。滋賀県彦根市のグラウンドを訪れて、前田監督に話を訊いた。(取材・文:加藤健一)
近江高校は「全然カオスじゃない」
全国高校サッカー選手権大会3回目の出場にして初の決勝進出を果たし、青森山田に敗れはしたものの、独自のスタイルを貫いた近江高校の躍進は記憶に新しい。それから2カ月半、キャプテンの金山耀太ら3年生が離れ、4月に入学する新入生たちを迎えた新チームは近江高校第2グラウンドにいた。
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Aチームの控え組中心のメンバーで臨んだあるゲームで目に付いたのは、冬に国立競技場を何度も沸かせたのと同じようなアグレッシブなプレーの連続。当時の報道では「カオス」という表現が頻繁に使われていたと記憶しているが、それには違和感があった。
「選手権の姿というのは普段プリンスリーグで対戦するチームからしたら、『またか』って思うような再現性のあるやり方なんですよね。だから全然カオスじゃないですよね。選手たちには抽象度の高いことを要求する中で、具体的なプレーをピッチで表現している」
抽象と具体。対義語になる2つの概念を行き来することに近江スタイルの深淵があるのではないだろうか、という仮説が生まれる。
ボールを保持して、積極果敢にゴールを目指す。湧き出るように複数の選手が攻撃に関わってゴールに迫り、ボールを失った瞬間に奪いにプレスをかける。躍動感を生む理由を前田監督は「いい意味でのルール違反」にあると言う。