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Jリーグ 8か月前

22歳・染野唯月は「ひと皮むけつつある」。東京ヴェルディを勝たせるために。使われ続けている意味への自答【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

「駆け引きで勝てなければゴールは奪えない」



 左サイドで得たスローインで森田が後方のMF稲見哲行へ一度下げる。稲見が選択したのは右サイドへのロングフィード。標的は身長188cm体重80kgのサイズを誇る途中出場のMF綱島悠斗だった。

 綱島を自由にさせないとばかりに、京都はMF佐藤響、守備を固める3バックへの移行とともに左ストッパーで投入されていたDF三竿雄斗の2人が競り合った。しかし、空中戦を制したのは綱島だった。頭でボールを落とした前方には、ノーマークになっていたMF齋藤功佑がいた。

 ゴールへの期待とともに、金曜日夜の開催にもかかわらず1万人あまりのファン・サポーターが駆けつけた味の素スタジアムが沸いた。前を向いてクロスを放つ体勢に入った齋藤へプレッシャーをかけようと、京都のDF麻田将吾が釣り出された結果、ゴール中央にはDF宮本優太しかいなかった。

 相手ゴール前の状況を察知した染野は、最後の力を振り絞ってゴール前へスプリントを開始していた。ターゲットにすえていたのは、サイドバックを主戦場とする宮本の背後。染野が振り返る。

「あそこは常に狙っているところだし、何よりも自分がゴール前に入っていく回数を、絶対に誰よりも増やさなきゃいけないと思っていた。相手のセンターバックとの駆け引きでも絶対に負けたくないし、そこの駆け引きで勝たなければ、ゴールというものは絶対に奪えないとも思っているので」

 自身と齋藤の両方を見ながら戻る宮本に対して、染野は一度宮本の眼前に姿を現し、次の瞬間、死角となる背後に回った。それだけではない。さらに加速しながら右足から滑り込んでいく。

「ソメ(染野)と目が合ったとういか、中の状況を見たときに、もうソメが相手の背後にポジションを取っていたのがわかった。あのスピードであのコースへ蹴って、あとはソメが合わせてくれると信じたなかでの選択になった。もうあそこしか、点と点で合わせるしかない状況だったので」

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