追ってきた遠藤航の背中「自分はそういった…」
「湘南ベルマーレで再びプレーさせていただくことになりました。ベルギーでは活躍することができず、まだ自分にとって海外でプレーするのは早かったと感じています。またこの大好きなクラブでチームと共に個人としても成長し、もう一度大きなチャレンジができるように日常を大切にして頑張ります」
挫折を味わった自分自身を客観視し、海外挑戦は時期尚早だったと素直に認めた上で努めて前を向く。今シーズンの湘南でマークしている守備面の突出した数字、攻撃面でも描き始めた成長曲線、そして大岩ジャパンでマークした念願の初ゴールは、すべて昨夏に誓った捲土重来の延長線上にある。
だからといって、U-23代表のなかに確かな居場所を築けたとも思っていない。
「理仁くん(山本)やチマ(藤田)のようなボール扱いやポジショニング、あるいは攻撃のときのビルドアップといったものにはまだまだ及ばない。今日もゴールは決められたけど、守備のときの立ち位置や逆サイドのボランチへの絞りといったところで、試合中に剛さん(大岩監督)から大声で叫ばれて、指示されていた場面が何回もあった。内容的にもまだまだ足りないところが多いと思っています」
4月中旬からは次なる戦いがカタールで始まる。パリ五輪のアジア最終予選を兼ねた、AFC・U-23アジアカップのエントリー数は23人。3月シリーズより3人少ない点に、田中も気持ちを引き締める。
「多少は(代表入りする可能性が)上がったかもしれないけど、次はまた人数が減りますし、特に中盤の争いはものすごく厳しい。まずは湘南でしっかりと活躍して、上位に食い込ませていきたい」
湘南のアカデミーの大先輩であり、湘南を皮切りに浦和、シント=トロイデン、シュツットガルトをへて、昨夏に電撃的に加入した名門リバプールで絶対的な居場所を築き上げた日本代表のキャプテン、遠藤航の背中を追ってきた。中盤の守備的なポジションを担う上で、最高のお手本にもすえてきた。
「自分はそういったリーダーシップを取れるようなタイプというか、キャラじゃないので。それでも、ピッチ上ではしっかりとコミュニケーションを取っていく力はつけていきたい。これからアジアで戦っていくなかで、対応力を含めてそういったものが必要になってくると思うので」
アジアを勝ち抜いた先には、おのずと世界との戦いが待つ。2016年のリオ五輪でもキャプテンを任された遠藤が発揮する、天性のリーダーシップは持ち合わせていないと田中は自己分析する。それでも、攻守両面だけでなくメンタル面でもチームをパワーアップさせる、中盤のダイナモとしての存在感を右肩上がりで放ちながら、21歳のホープはパリ五輪切符獲得がかかる熾烈な戦いへ挑もうとしている。
(取材・文:藤江直人)